2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659763
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
橋谷 光 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10315905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 博充 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70410313)
三井 烈 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90434092)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ペリサイト / 過活動膀胱 / 微小循環 / 虚血 / 自動運動 |
Research Abstract |
マウス膀胱尿路上皮下組織(以下、粘膜下組織)に分布する細静脈の機能および形態的特性について検討を行った。既に報告されているラット膀胱粘膜下の細静脈と同様(Hashitani et al., 2011, J.Urol., 185:2382)、マウス粘膜下細静脈は1分間に約5回の周期的な自発収縮を有しており、その発生は小胞体からのカルシウム(以下、Ca)遊離と電位依存性L型Caチャネルを介したCa流入に依存していた。しかしラットでは自発細胞内Ca濃度上昇を示す細胞は主に平滑筋細胞であるのに対して、マウス粘膜下細静脈ではペリサイトのネットワークが自発細胞内Ca濃度上昇を発生していた。透過および走査型電子顕微鏡による構造解析によっても、マウス粘膜下細静脈壁は内皮細胞とペリサイトのみで構成され平滑筋を欠くことが明らかになった。粘膜下細静脈ペリサイトはアルファ平滑筋アクチン抗体により染色され、細胞体から複数の突起を伸ばしてしてネットワークを形成していたが、これまで膀胱壁の間質細胞での発現が報告されているKitおよびPDGFRアルファでは標識されなかった。また毛細血管のペリサイトマーカーとして知られるNG2には陰性であり、PDGFRベータにも特異的な染色性を示さなかった。ペリサイトが強い収縮性を有することと考え合わせると、その表現型はむしろ平滑筋型であると考えられた。自発細胞内Ca濃度上昇の細胞間同期性はL型Caチャネルに依存しており、その発生には小胞体からのPLCおよびIP3に依存したCa遊離とともに、Ca貯蔵部位活性型Ca流入が必須であることが示された。また小胞体のCaポンプの機能はミトコンドリアのATP産生と密に連携していた。 10週齢の2型糖尿病モデル(db/db)マウスにおいては粘膜下細静脈の自動性に明らかな障害は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス膀胱粘膜下細静脈に存在するペリサイトの自発細胞内Ca濃度上昇と細静脈の自発収縮の連関を確認し、またペリサイトの自発細胞内Ca濃度の発生機序を解明することができた。電子顕微鏡により粘膜下細静脈が平滑筋細胞を欠くことを確認し、免疫蛍光染色によりペリサイトは平滑筋タイプの表現型を示し,毛細血管のペリサイトあるいは膀胱壁の間質細胞とは識別されることを明らかにした。 2型糖尿病モデル(db/db)マウスを用いた検討では10週齢においては粘膜下細静脈の自動運動に明らかな変化を認めなかったが、過活動膀胱症状を呈する12週齢自然発症高血圧ラット(SHR)においてはペリサイトの増殖が認められた。 電気生理学的検討は予備実験の段階でパッチクランプ法を確立できたものの、新鮮単離ペリサイトと他の細胞の識別が問題となるため、緩やかな酵素処理により細胞ではなく単離細静脈あるいは組織標本内の細静脈ペリサイトに対するパッチクランプ法の適用を試行している。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス膀胱粘膜下細静脈のペリサイトが自発活動と収縮性を有すること、ラット粘膜下細静脈では平滑筋が同様の機能を担っているがSHRではペリサイトの増殖を認めることなどから、ペリサイトから平滑筋への表現型移行を推定することができる。種差によりペリサイト様の形態を維持し、あるいは平滑筋型の形態に移行していることは細静脈内圧や透過性等の因子に応じた機能的適応であるとも考えられる。それでは尿流出路部分閉塞や虚血、炎症などによりペリサイトの増殖や表現型移行が引き起こされ、その結果膀胱壁のリモンデリングが生じるのかという点が最も重要な問題点である。 より高週齢の2型糖尿病モデル(db/db)マウスでの膀胱機能(排尿行動)解析を合わせた評価、あるいは加齢モデル(kl/kl)マウスでの機能的および形態的検討を行うことにより、上記の問題点を解明できると考えられる。またパッチクランプ法を適用することによりペリサイトのチャネル特性およびその変化を検討し、イオンチャネルプロファイルから他種細胞との識別や特異的なマーカーの同定も可能となると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品の購入は行わず、主に試薬および動物(2型糖尿病モデル(db/db)マウス、加齢モデル(kl/kl)マウスを含む)に使用する。研究成果の発信および研究遂行に必要な情報取得、討議を行う目的で学術研究集会への参加旅費を申請する。
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Research Products
(2 results)