2011 Fiscal Year Research-status Report
網羅的遺伝子発現解析に基づく卵巣癌幹細胞に特異的な免疫療法の開発
Project/Area Number |
23659777
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小西 郁生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90192062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万代 昌紀 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80283597)
濱西 潤三 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378736)
馬場 長 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60508240)
吉岡 弓子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10402918)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / 免疫治療 / 化学療法 / 血管内皮前駆細胞 |
Research Abstract |
National Center for Biotechnology Information上の、化療前後の卵巣癌の腫瘍組織29ペアのマイクロアレイデーターを入手し、化療後に変化する遺伝子群を抽出した。その中で免疫に関連した因子について、当科で試験開腹後、化療を行い、さらに二期的手術を行った卵巣癌患者20人の同意を得て免疫組織染色にて解析した。マイクロアレイ解析にて、化療後に亢進した遺伝子群には多くの免疫関連遺伝子、特にT細胞性免疫関連遺伝子が含まれ、その活性化が示唆された。逆に化療後に低下した遺伝子群には、Foxp3(制御性T細胞)、PDCD1(免疫抑制受容体PD-1)が含まれ、その発現の低下は化療感受性と相関した(p<0.001)。これらの免疫学的マーカー発現は、一部の幹細胞マーカーの発現と逆相関していた。免疫組織染色にて化療後に腫瘍内のCD8T細胞数は増加し、逆にFoxp3+細胞数は低下した。さらにこれらの変化は、卵巣癌の再燃と有意に相関した(P=0.013, P=0.029)。以上から、化療は、卵巣癌局所で免疫活性を誘導している可能性、また卵巣癌局所の免疫状態は卵巣癌のstemnessと関連している可能性が示唆された。一方、、我々は以前に胚細胞由来の血管内皮前駆細胞を用いた免疫治療モデルを開発したが、臨床応用を目指すためには安定した自己由来細胞の供給が不可欠である。そのため再生医療技術を応用し人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、血管内皮前駆細胞を分化誘導することを試みた。iPS細胞を、特殊培地下で培養し血管前駆細胞、血管細胞への分化誘導を行った。培養条件の改良によりCD31陽性細胞までは分化誘導可能であることをフローサイトメトリーで確認した。しかしその途中の分化段階である血管前駆細胞の状態でとどめることが困難であり、今後培養条件の検討をおこなっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌幹細胞に対する免疫の検討では、卵巣癌における局所免疫とstemnessとの関連が示唆されつつあり、今後、さらに自施設での検体を用いた検討を進めることにより、治療標的となりうる分子の発現を同定できる可能性が高い。一方で、iPSを用いた治療モデルの開発も行っているが、培養条件が繊細であり、なかなか安定した結果が得られていない。今後、専門家にコンサルトしつつ進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
National Center for Biotechnology Information上の、化療前後の卵巣癌の腫瘍組織29ペアのマイクロアレイデーターを入手し、化療後に変化する遺伝子群を抽出した。その中で免疫に関連した因子について、当科で試験開腹後、化療を行い、さらに二期的手術を行った卵巣癌患者20人の同意を得て免疫組織染色にて解析した。マイクロアレイ解析にて、化療後に亢進した遺伝子群には多くの免疫関連遺伝子、特にT細胞性免疫関連遺伝子が含まれ、その活性化が示唆された。逆に化療後に低下した遺伝子群には、Foxp3(制御性T細胞)、PDCD1(免疫抑制受容体PD-1)が含まれ、その発現の低下は化療感受性と相関した(p<0.001)。これらの免疫学的マーカー発現は、一部の幹細胞マーカーの発現と逆相関していた。免疫組織染色にて化療後に腫瘍内のCD8T細胞数は増加し、逆にFoxp3+細胞数は低下した。さらにこれらの変化は、卵巣癌の再燃と有意に相関した(P=0.013, P=0.029)。以上から、化療は、卵巣癌局所で免疫活性を誘導している可能性、また卵巣癌局所の免疫状態は卵巣癌のstemnessと関連している可能性が示唆された。一方、、我々は以前に胚細胞由来の血管内皮前駆細胞を用いた免疫治療モデルを開発したが、臨床応用を目指すためには安定した自己由来細胞の供給が不可欠である。そのため再生医療技術を応用し人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、血管内皮前駆細胞を分化誘導することを試みた。iPS細胞を、特殊培地下で培養し血管前駆細胞、血管細胞への分化誘導を行った。培養条件の改良によりCD31陽性細胞までは分化誘導可能であることをフローサイトメトリーで確認した。しかしその途中の分化段階である血管前駆細胞の状態でとどめることが困難であり、今後培養条件の検討をおこなっていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイクロアレイ解析、免疫染色等の臨床検体の解析に約1/3の費用を充て、さらにマウスの細胞株等を用いた、幹細胞への免疫治療のモデル開発に約1/3、さらに、iPS細胞の分化と免疫治療への応用に約1/3を充当する予定である。
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Research Products
(2 results)