2012 Fiscal Year Research-status Report
ミューラー管悪性腫瘍における癌幹細胞の同定と新たな治療戦略の確立
Project/Area Number |
23659787
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
江本 精 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (80258540)
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Keywords | がん幹細胞 / 子宮癌肉腫 / ミューラー管 / 婦人科腫瘍 / 血管新生 / CD133 / Oct4 / Wnt4 |
Research Abstract |
がん幹細胞の追求は、将来のがん治療を根本的に大きく変動させる可能性を秘めている。近年の知見から、現行の化学療法や放射線療法は分化したがん細胞に対しては殺細胞効果を認めるが、がん幹細胞に対してはほとんどその効果を認めないことが明らかになった。つまり、悪性腫瘍の中に少数存在するとされるがん幹細胞が腫瘍全体をコントロールしているという説が強く支持されるようになった。従って、現行の治療法では大幅な治癒率の向上は期待薄であり、がん幹細胞を標的とする新たながん治療戦略の開発が特別に注目されている。現在、あらゆる悪性腫瘍においてがん幹細胞を探索する研究が活発に行われ始めたが、婦人科領域ではがん幹細胞の同定はまだ明らかにされていない。本研究では婦人科悪性腫瘍の主体である子宮がんのがん幹細胞を追求し、新たな治療法を創案するのが目的である。我々は婦人科がんの中でも最も未分化であり且つ多分化能を有するミューラー管悪性腫瘍に注目し、がん幹細胞の追求を行ってきた(Emoto; Cancer 1993)。本腫瘍はがん肉腫であり、以前から幹細胞腫瘍(Stem Cell Tumor)ではないかと推察されていた極めて悪性度が高く予後不良な腫瘍である。平成23年度では、我々が過去において樹立した本腫瘍のFU-MMT-1細胞株(Emoto M, et al. Cancer 1992)を用いてCD133表面抗原をマーカー同腫瘍の幹細胞様集団の絞り込みに成功し、その性状分析を行い学術論文として報告した(Choijamts B, Emoto M, et al. Stem Cell 2011)。CD133+FU-MMT-1細胞はミューラー管分化関連遺伝子を著明発現する幹細胞モデルであり、今後更なる追求を行う予定である。特にがん幹細胞集団と非がん幹細胞集団との間のマイクロRNAの発現の違いについて現在、解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に新たに判明した研究データをまとめることにより、まずは最初の学術論文を報告した(Choijamts B, Emoto M, et al. Stem Cell 9:1485-1495, 2011)。平成24年度の成果を元に、現在、それに続く第二論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について次の2点が重要である。第一はマウスを用いた実験の円滑な遂行、第二はマイクロRNAとがん幹細胞との関連についての究明である。動物実験の遂行には安定したがん幹細胞株の供給が重要であり、常に増殖能と分化能を検討した上でFU-MMT-1細胞の培養と分離を行っていく必要がある。さらに、我々が樹立したFU-MMT-3子宮癌肉腫株(Emoto M, et al Virchow Archiv1997:431;249-256)を用いてFU-MMT-1株と同様に幹細胞の分離に努める。今後はCD133で分離した子宮癌肉腫の幹細胞集団におけるマイクロRNAの発現を調べる予定であり、施設内での精密な検討が困難であれば外部機関との共同又は委託研究として遂行する必要が出てくる可能性がある。また、子宮に発生する標準的ながんであるEndometrial CancerとのmiRNAの発現の差異を調べている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
microRNA解析を主体に使用し、それに係る消耗品代と人件費を主として支出する。旅費も国内および国外の学会等の出張費としてこれまで同様に使用予定である。
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