2011 Fiscal Year Research-status Report
なぜ舌下免疫療法は有効なのか?-マウスモデルでの免疫学的解析-
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23659796
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
川内 秀之 島根大学, 医学部, 教授 (50161279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森倉 一朗 島根大学, 医学部, 助教 (00362939)
青井 典明 島根大学, 医学部, 講師 (80452556)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アレルギー性鼻炎 / スギ花粉症 / 舌下免疫療法 / 制御性T細胞 / 抗原提示細胞 / サイトカイン |
Research Abstract |
(1)アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の有用性とその機序を明らかにするため、アレルギー性鼻炎のモデルマウスにおいて、抗原提示細胞および制御性T細胞の機能・動態について解析を行った。OVA舌下投与群では、頸部リンパ節由来のリンパ球からのTh2 サイトカイン産生が有意に抑制された。これらのリンパ節では、flow cytometryによるCD4+CD25+ T細胞数の増加は認めないものの、本細胞群のmRNAレベルでのFoxp3 およびIL-10 特異的な遺伝子発現の増強が認められた。さらに頸部のリンパ節から制御性T細胞を採取し、in vitroにおけるOVA特異的effectorT細胞のTh2型サイトカイン産生の抑制効果を検討したが、舌下免疫を行った群の細胞では有意の抑制効果を認めた。さらに制御性T細胞の誘導に関係する樹状細胞の役割を検討するため、OVAとCCL19/CCL21プラスミドの同時投与による抑制効果についても検討し、マウス脾臓のCD4陽性T細胞からのTh2型サイトカイン(IL-5)産生の抑制効果の増強を認めた。(2)マウススギ花粉症モデルでのスギ花粉症治療米の舌下投与の有効性とその機序に関する検討:マウスのスギ花粉抗原に対するT細胞エピトープである3C7Cと99-3Cを用いて行った。その際、舌下投与における必要な投与量について、200mgの投与量で投与効果の有無を検討し、3C7C、99-3CのいずれのT細胞エピトープを用いても舌下投与の鼻症状の抑制効果が認められることを確認した。さらに治療米を投与したマウスでは、血清中のスギ花粉特異的IgEが対照群に比べ、有意に低下し、頸部のリンパ節におけるTh2型サイトカイン産生が抑制される傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に計画した研究について、OVAをアレルゲンに用いたマウスモデルでの検討では、制御性T細胞のin vitroでの検討は十分にできたが、樹状細胞に関する検討では、十分な解析ができなかった。ケモカインであるCCL19とCCL21に欠損を認めるpltマウスの取得、飼育に遅れを生じた。スギ花粉症マウスモデルでの検討については、十分な成果を得ることができた。その概要は下記のとうりである。(1)スギ花粉をアレルゲンとしたマウスアレルギー性鼻炎モデルの作製:Day0とDay7にスギ花粉抽出物とAlumをBalb/cマウスに腹腔内投与して感作を成立させ、Day14に血清を採取して ELISA法にてスギ花粉特異的抗体価を測定した。Day21から28まで、スギ花粉抽出物の点鼻を行い、マウススギ花粉症モデルを作製した。最終点鼻直後より2分間もしくは5分間の鼻かきとくしゃみの回数を測定し、鼻粘膜組織を採取して組織学的検討を行なった。最その結果、生理食塩水を点鼻したマウスでは鼻かきやくしゃみが惹起されなかったが、スギ花粉抽出物を点鼻したマウスでは、有意の回数の鼻かきやくしゃみが惹起された。鼻粘膜組織では、正常のマウスと比較し、上皮内あるいは上皮下の粘膜固有層に著明な好酸球浸潤を認めた。(2)スギ花粉症治療米の舌下投与における有効性:マウスのスギ花粉抗原に対するT細胞エピトープである3C7Cと99-3Cを用いて行った。その際、舌下投与における必要な投与量について、200mgの投与量で投与効果の有無を検討し、3C7C、99-3CのいずれのT細胞エピトープを用いても舌下投与の鼻症状の抑制効果が認められることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
OVAをアレルゲンに用いたアレルギー性鼻炎マウスモデルにおける舌下免疫療法の研究では、pltマウスを用いた検討を中心に行う。in vivoにおける検討の中で、頸部リンパ節での制御性T細胞の動態を含め、詳細に検討する。スギ花粉症モデルでの花粉症治療米を用いた検討では、用量設定試験や有効性の機序に関する検討を行うと同時に、粘膜アジュバントの同時投与が有効性を増すかどうかについて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が生じた状況は、pltマウスの取得、飼育に後れを生じたため、その費用が残額として残った。平成24年度の研究費については大部分をpltマウスの飼育管理費用と免疫学的な実験に必要な試薬、抗体等の費用に充てる。
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