2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659804
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
富田 浩史 東北大学, 国際高等研究教育機構, 准教授 (40302088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 江里子 東北大学, 国際高等研究教育機構, 助教 (70375210)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 視覚再生 / 遺伝子治療 / 人工網膜 / ウイルスベクター |
Research Abstract |
緑藻類クラミドモナスより単離されたチャネルロドプシン-2(ChR2)は、発色団としてレチナールを有し、540nm以下(青色)の光に反応し、細胞内に陽イオンを透過させる光受容陽イオン選択的チャネルとして機能することが知られている。「光受容 + 陽イオンチャネル」という特性から、神経細胞に発現させた場合、単一の分子の働きで光情報を電気信号に変換することが可能である。これを利用することによって、一次視覚野にChR2遺伝子を導入し、視覚野を直接、映像で刺激するという全く新しい脳刺激型人工視覚装置を作ることができると考えられる。これを達成するには、視覚野への遺伝子導入法を確立すること、次には、視覚野の特定の神経細胞に遺伝子を導入することが必要である。本年度は、上記2点について、遺伝盲ラットを用いて検討した。脳に遺伝子を導入する方法として、マイクロシリンジを用いて一定の圧力で時間をかけて注入する方法がある。今回、アデノ随伴ウイルスベクター2型、および5型を用いて、注入による遺伝子導入法を検討したところ、両ウイルスで遺伝子の導入が確認された。導入効率は5型の方が高いことが確認された。一方、皮質の広い範囲に導入するために、厚膜を剥がし、ウイルス液を散布した。しかし、この方法では皮質に遺伝子を導入することができなかった。皮質の広い範囲に導入する方法を今後検討する必要がある。ウイルス液を注入した場合、遺伝子発現は細胞の種類に関係なく、導入されているようであった。このため、特定の細胞に遺伝子導入をするために、新たにカルモジュリンキナーゼIIα(CaMKIIα)プロモーターを含むウイルスベクターを作製した。次年度、これを用いて遺伝子導入を行い、光反応性を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アデノ随伴ウイルスベクターを用いて脳への遺伝子導入を行い、遺伝子の発現を確認した。血清型の異なるアデノ随伴ウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行い、導入効率の良い血清型を知ることができた。一方、広範囲に遺伝子を導入する方法については、確立に至っていないものの、通常の方法(ウイルスベクターを散布)では遺伝子を導入できない原因を特定しつつあり、次年度では遺伝子の導入に成功できると考えている。注入により遺伝子を導入できたが、当然のことながら、CAGプロモーターを用いた場合、細胞選択的に導入できなかった。本年度、CaMKIIαプロモーターを有するアデノ随伴ウイルスベクターを作製することができ、次年度にはCaMKIIαプロモーターを持つウイルスを用いた遺伝子導入を実施できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
明暗弁別能の行動学的解析東日本大震災の影響により、一部機器が使用できなくなり、23年度予定した研究を、24年度に実施することとし、機器を使用しないで行うことができる24年度実施課題を繰り上げて行った。そのため、当初予定した予算の使用用途と異なったため、予算の繰越が生じた。今後の研究推進計画は、遺伝子導入後、アクリルガラスで視覚野表面を多い、外界の光が透過するようにする。網膜への遺伝子導入実験では、遺伝子発現が充分に得られるまでに、約2ヶ月を要することが明らかになっているため、遺伝子導入2ヵ月後に、明暗ボックスを用いて、視覚野の光受容能を調べる。提示する光を青色、黄色、暗状態とし、明所、暗所にいる割合を算出することにより、光反応性を調べる。網膜神経節細胞には、メラノプシンを産生する細胞が存在し、視細胞が変性し失明に至っても明暗反応が存在する。そこで、完全に網膜からの入力を遮断することを目的とし、明暗ボックスを用いた光反応性を調べた後、視神経を切断し、再度明暗ボックスを用いて光反応性を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画使用動物には、遺伝的に失明を来たす遺伝盲ラットを用いる。遺伝盲ラットは唯一、日本クレア(株)が販売し、使用頻度も少ないために、比較的高価である。また、RCSラットは生後3ヶ月でほぼ視細胞は消失にするが、光反応性は6ヶ月まで残っているとも報告されていることから、長期的に飼育し、遺伝子導入を行う必要がある。このため、動物飼育費、動物代金が大半を占める。一方、光を照射する装置も試行錯誤を繰り返して自作する必要があるため、こういったLEDを含む工学部品も必要である。
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Research Products
(17 results)