2011 Fiscal Year Research-status Report
視神経軸索流のライブイメージングを用いた緑内障の神経保護治療評価の確立
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23659814
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷原 秀信 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60217148)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 緑内障 / 軸索輸送 / 網膜神経節細胞 / 2光子レーザー顕微鏡 |
Research Abstract |
これまでに、われわれはヒトの色素散布性緑内障のモデルである自然発症の緑内障マウスDBA/2Jを用いて、網膜神経節細胞が細胞死を起こす前に、神経線維層を走行する網膜神経節細胞の軸索内において、蛍光標識されたミトコンドリアの軸索輸送が順行性及び逆行性のいずれの方向でも停止していることをマウス眼球に侵襲を加えることなく、2光子レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムに観察するシステムを確立していた。この手技を用いて、ヒトの開放隅角緑内障のモデルで観察を行うこととした。ミトコンドリアが蛍光標識されたトランスジェニックマウスの上強膜静脈をアルゴンレーザーで焼灼して房水流出抵抗を上昇させることで、眼圧の上昇を促し、開放隅角緑内障のモデルとした。術後一定期間飼育し、マウス用眼圧計(Tonolab)によって眼圧が有意な高値である30mmHg程度で維持されていることを確認し、このモデルマウスの眼球を摘出、固定して網膜切片を作成し、網膜神経節細胞が細胞死を起こす時期を特定した。次にこのモデルについて網膜神経節細胞が細胞死を起こす前の段階で2光子レーザー顕微鏡を用いて経強膜的にもうまく神経節細胞の観察を行った。この実験によって、神経線維層を走行する網膜神経節細胞の軸索内において、蛍光標識されたミトコンドリアの軸索輸送が順行性及び逆行性のいずれの方向でも障害されていることをマウス眼球に侵襲を加えることなく、2光子レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムに観察できた。これらの結果から、網膜神経節細胞の軸索輸送の異常が複数の緑内障モデルで確認できたこととなり、この軸索輸送異常は高い眼圧によって普遍的に誘導される減少であることが示唆された。したがって、網膜神経節細胞における軸索輸送異常は緑内障病態と本質的に関わっていると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標とした、開放隅角緑内障モデルマウスでの軸索流の異常を確認、評価できたため、おおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
我々のグループが過去に報告した疑似緑内障動物モデルで神経保護効果が認められる薬剤であるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF; Brain Res 2000)、ciliary neurotrophic factor (CNTF; IOVS 2000)、interleukin-1と-6(IL-1, IL-6; Brain Res 2001, BBRC 2003)、lens epithelium-derived growth factor (LEDGF; Brain Res 2003)、ROCK阻害薬Y-27632(Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2008)をDBA/2Jマウスの硝子体内に注入したあとに、視神経軸索流が回復するかを観察する。また、軸索流の回復した網膜神経節細胞の細胞死が抑制されるのか、神経保護治療薬の投与をおこなっても、細胞死に至る網膜神経節細胞は、やはり軸索流の停滞が細胞死の前に見られるのかを観察し、眼圧上昇、神経保護治療、軸索流の変化、細胞死の因果関係を検証する。さらに、軸索輸送異常およびその改善の分子メカニズムを解明するために、網膜神経節細胞のコンパートメント培養を行い、軸索と細胞体を分けて刺激することで生じる現象を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験試薬代と実験動物飼育代として、80万円を消耗品費の合計としている。実験試薬は培養細胞を用いた実験に要するものも含まれる。旅費に関しては、国内調査研究をおこなう目的で10万円と計算し、海外調査研究は、年20万円と計算した。また、研究論文を複数報まとめる予定であるため英文校閲料として5万円を予定し、論文投稿及び掲載料に必要な費用として15万円を計上する予定である。
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