2011 Fiscal Year Research-status Report
制御性樹状細胞を誘導させたドナー角膜による新しい移植免疫制御システムの開発
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23659821
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
熊倉 重人 東京医科大学, 医学部, 講師 (90271296)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 制御性樹状細胞 / 角膜移植 / 移植免疫 |
Research Abstract |
本研究では、骨髄細胞から作成した制御性樹状細胞により角膜移植拒絶反応が抑制出来るか否かについて検討を行った。方法)C57BL/6マウスから作成した制御性樹状細胞をBALB/cレシピエントマウスに移入し、1日目にC57BL/6マウス角膜を移植した。術後3週目に各群の頸部リンパ節よりリンパ球を採取し、IFN-g産生細胞の有無、制御性T細胞の有無、アロ抗原に対するリンパ球の反応について各群で比較検討した。さらに、拒絶反応の有無を細隙灯顕微鏡にて術後8週目まで観察し拒絶反応の程度を各群で比較検討した。結果)リンパ球の解析により、制御性樹状細胞を投与した群では無処置群に比較し、IFN-g陽性細胞数が有意に減少し、制御性T細胞が有意に上昇していた。アロ抗原に対するレシピエントリンパ球の反応をELISPOT assayにて各群で比較したところ、制御性樹状細胞を投与した群では無処置群に比較しdirect pathwayによるアロ抗原反応とindirect pathwayによるアロ抗原反応の双方が抑制されていた。無処置群のレシピエントマウスは、移植後8週目におけるドナー角膜の生着率は50%であったのに対し、制御性樹状細胞を投与した群では生着率が87.5%と有意に上昇した。考察)以上よりドナー由来制御性樹状細胞は、角膜移植拒絶反応を抑制する効果があることが示された。そのメカニズムとして、拒絶反応を引き起こす活性型T細胞の抑制および拒絶反応を抑制する制御性T細胞の誘導が考えられた。本研究で最も強調すべき結果はドナー抗原由来制御性樹状細胞がIndirect pathwayを抑制したことである。本結果を元に今後はドナー角膜内に制御性樹状細胞を誘導させ拒絶反応を抑制する次年度の計画に繋げていく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的については、本研究の仮説に対し結論を得ることが出来たため十分達成出来たと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞だけでなく、CD14+細胞やCD34+細胞などの抗原提示細胞となりうる前駆細胞が角膜内または他の臓器に存在していることが示唆されている。そこで、臓器内に浸潤している前駆細胞を利用することにより、骨髄細胞を用いなくてもドナー臓器内で制御性樹状細胞を誘導できるのではないかと考えた。本研究では、角膜移植片用の保存液にサイトカイン(GMCSF、IL-10、TGF-b)を加えることでドナー臓器内の前駆細胞を制御性樹状細胞に変化させ、角膜移植の拒絶反応を抑制できるか否かを検討する。我々の知る限りでは、ドナー臓器内で制御性樹状細胞を分化させ移植拒絶反応を制御するという発想のもとに行われた研究は今まで報告が無い。この点からも本研究が遂行できれば、今までにない斬新なアイディアを世界に向けて発信できると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)GMCSF、IL-10、TGF-bとの培養でドナー角膜内に制御性樹状細胞を誘導できるか:我々は骨髄由来DCregsがCD200R3を強発現しているという結果を得ている。そこで、CD200R3をDCregsの特異的マーカーとし、その発現により角膜内でのDCregs誘導の有無を検討する。すなわち、ドナー角膜をGMCSF、IL-10、TGF-bで培養し(培養時間、最適温度も検討する)、培養した角膜のmRNAからcDNAを作製してreal-time PCRによるCD200R3の発現をnaiveマウス角膜と比較する。さらに、培養した角膜内におけるMHC-II抗原、補助シグナル分子、CD11c、CD11bの発現を免疫組織化学染色またはフローサイトメトリーで検討する。2)GMCSF、IL-10、TGF-bで培養した角膜により角膜移植拒絶反応を抑制できるか:上記の実験で角膜内にDCregsを誘導し、その培養時間、最適温度を決定出来れば、C57BL/6マウスから採取したドナー角膜を培養しBALB/cレシピエントに移植する。移植後8週目まで細隙灯顕微鏡により角膜混濁を確認し、移植片生着率を下記に示した各実験群で比較する。i)無処置群、ii)メディウム(サイトカインなし)培養群、iii)メディウム+GMCSF培養群、iv)メディウム+GMCSF、IL-10、TGF-b培養群
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