2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659833
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
寺師 浩人 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (80217421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊原 俊介 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命助教 (50444592)
藤井 美樹 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学研究員 (80444602)
櫻井 沙由理 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (20594534)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 光受容 / メラノプシン |
Research Abstract |
(1)皮膚におけるMelanopsinの発現解析1.腫瘍切除術などに伴い廃棄される余剰なヒトの正常皮膚を用いて組織切片を作成し、抗Melanopsin抗体を用いた免疫組織化学的手法により正常ヒト皮膚におけるMelanopsinの発現および発現している場合、その局在について検討を行った。Melanopsinは表皮に瀰漫性に強い発現を認めた。また真皮では線維芽細胞にも発現が認められた。2.上記と同様に手術時に得られた正常ヒト皮膚からmRNAを抽出し、cDNAに逆転写を行いcDNAライブラリーを作成した。これに対してmelanopsin(opn4)に対するPCRプライマーを用いてRT-PCRを行ったところ、目的とするバンドが得られた。また本cDNAを用いてreal time PCRを行ったところ、コピー数は多くはないが発現が確認された。3.上記と同様に手術時に得られた正常ヒト皮膚をホモジェナイズし、タンパク質を抽出した。これに対して抗Melanopsin抗体を用いてウェスタンブロッティングを行ったところ、タンパク質レベルでもその発現が確認された。4.ファイブロブラスト、メラノサイト、ケラチノサイトそれぞれを培養し、mRNAおよびタンパク質を抽出し、上記2,3と同様の実験を行ったところ、いずれからも発現が認められたが、特にメラノサイトで強い発現が認められた。5.培養線維芽細胞を暗条件下で培養を行った後、青色光および黄色光を照射し、経時的にERKのリン酸化を定量的に測定した。特に青色光では照射時間とともにERKのリン酸化が進む傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では正常皮膚および線維芽細胞におけるmRNAおよびタンパク質レベルでの発現解析の確認を行うこととしていたが、これらの確認が行えた上、生化学的に光照射により細胞内シグナリングが活性化される事が確認された。以上より、当初の計画以上に伸展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度ではヒトの皮膚におけるMelanopsinの発現が確認され、また、光照射によりbFGFなどの細胞増殖因子のシグナルトランスダクションの下流にあるERKのリン酸化の亢進が確認された。一方で、9-cis retinalを添加する事で光照射なくともリン酸化が亢進されることも明らかとなった。さらに照射光の波長およびretinalの添加の有無で生化学的な挙動に差が認められる事も確認された。これらのデータから整合性のある考察はいまだ導きだされておらず、ファクターを一つずつ変化させて行きながらMelanopsinによる光受容の生物学的意義の検証を行う。RNA干渉等の系の確立も必要となる見込みである。なお、当初購入予定であったCO2インキュベーターについては既設の物を整備したところ十分に使用可能となり、また、H24年度ではより精密な細胞培養実験や分子生物学的実験、生化学実験が必要となる為、残額を技術補佐員の雇用費に当てることとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.培養線維芽細胞における光照射の影響の検討:450nmと570nmの光をLED照明装置を用いてそれぞれを細胞に照射する。これによりERKのリン酸化の程度を抗リン酸化抗体ー化学発光法を用いて生化学的に定量する。経時的定量と照射パターンの解析(450nm、570nm単独、または同時照射)とを行う。2.ERKの反応がMelanopsinに由来する事の証明:培養線維芽細胞に対してsiRNAを用いてMelanopsinのmRNAを干渉し、発現の抑制を行う。これにたいして光照射を行い、ERKのリン酸化の検討を行う。また、Gタンパク質に対しても同様にRNA干渉を行い、発現抑制をさせた上での光照射の影響の検討を行う。これらの研究を行う上で遺伝子操作、生化学実験では相当額の試薬費を要する。また、siRNAのプローブの作成は外注となり、比較的高額である。さらに技術補佐員を雇用し、実験操作の一部を担当させる為に、雇用費が必要となる。加えて、これらのデータを速やかに国際誌に投稿するため、英文校閲費や投稿にかかる費用も要する。
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