2012 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫治療法開発のための脂肪由来幹細胞に関する基礎的研究
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23659834
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
西野 健一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00138471)
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Keywords | 脂肪由来幹細胞 / リンパ管内皮細胞 / リンパ管新生 / VEGF-C |
Research Abstract |
脂肪由来幹細胞のリンパ管新生に対する基礎的研究を行った。 ラット後肢リンパ浮腫モデルをKanterら(1990)の報告に準じて、放射線を鼠径部に45Gy照射し後日鼠径リンパ節郭清することで作製し たが、放射線骨壊死により膝関節が露出するためこのモデルの使用を断念した。また、リンパ管内皮細胞の初代培養をMizunoら(2003)の報告に準じてラット胸管から採取することを 試みたが非常に困難であるため、市販のヒトリンパ管内皮細胞株を代用することとした。以上の理由から実験動物をラットからマウス に変更した。Zukら(2001)の報告に従ってマウスの鼠径部の脂肪組織から脂肪由来幹細胞の分離培養を行った。脂肪由来幹細胞がリンパ管新生因子を放出している かを検討するべく、脂肪由来幹細胞から抽出した馴化培地をリンパ管内皮細胞に作用させたところ、増殖(MTT assay)、管腔形成(Matrigel-base tube formation assay)、migration(transwell migration assay)の全てにおいて、ポジティブコントロールとして用いたリコンビナントVEGF-Cよりも強い効果を認めた。馴化培地に放出されている可能性のある既知のリンパ管新生増殖因子に関して、馴化培地を抽出する条件である無血清下での培養後の脂肪由来幹細胞と血清を含む増殖培地での培養後の脂肪由来幹細胞それぞれから抽出したmRNAを用いて、定量PCRを行ったところ無血清に曝されることによって、いくつかの増殖因子の発現が劇的に上昇する知見を得た。この現象はELISAでも確認された。これらin vitroで見られた現象をまとめて論文投稿する予定である。一方、適切な動物モデル作製に至らず、今後Matrigel plug assayによりin vivoでのリンパ管新生作用を検討するつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、ラット後肢リンパ浮腫モデルを過去の報告に準じて鼠径リンパ節郭清+放射線照射により作製する方針であったが、放射線照射の影響が多大で放射線骨壊死が生じ慢性浮腫モデルとして適切でないと判断し、このモデルを断念した。次にマウスの尾リンパ浮腫モデルを作製したが、その浮腫の程度を安定した系で定量する(尾の周径や直径をキャリパーで測定するのが主流であるが、定量性に疑問がある)ことが不可能であったため、このモデルの採用も断念した。小型動物でのリンパ浮腫モデルの作製は一旦取りやめて、今後リンパ管新生の定量をマウスMatrigel plug assayで行う予定である。また、リンパ管内皮細胞株を購入したが、ロットの問題のためか増殖が全く起こらず、実験に使用できず、その検討に数ヶ月を費やした。細胞株の海外取り寄せのあいだ、実験の進捗が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでの脂肪由来幹細胞のリンパ管内皮細胞に対するリンパ管新生作用は明らかなものであった。今後、この作用がin vivoでも同様に発揮されるか、リンパ管新生モデルを用いて評価する。実験のコントロールとしては、引き続きリンパ管新生作用が証明されているVEGF-Cを用いて比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
in vivoリンパ管新生の検討をマウスMatrigel plug assayで行う予定である。研究費は動物購入費、免疫染色試薬に当てる予定である。
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