2012 Fiscal Year Annual Research Report
腹部急性疾患に対する時間分解分光システムを用いた新たな測定法の開発
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23659848
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
垣花 泰之 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20264426)
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Keywords | 時間分解分光法 / 近赤外線分光法 / 酸素化型ヘモグロビン / 脱酸素化型ヘモグロビン / 肝臓 / 腸管 / 虚血 / 低酸素症 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年開発された時間分解分光システム(TRS)を腹部臓器の酸素化状態測定法に応用し、体表より腸管虚血を正確に検出できるのかを検討することである。本年度(平成24年度)は、TRSの送・受光の距離を調節できるプローブを作成し、それを用いて実験をおこなった。まず、仔豚にケタラールを筋注後、気管挿管を行い呼吸管理を行った。麻酔の維持はセボフルランを用い、筋弛緩薬は適宜追加し、呼気炭酸ガスとパルスオキシメータによる連続モニタリングを行った。肝臓領域および腸管領域の正確な位置に関しては、腹部エコーを用いて確認した後に、肝臓領域(右上腹部)と腸管領域(下腹部正中)に送・受光プローブを装着した。まず、100%酸素吸入後、100%窒素(酸素濃度0%)に変更し、3分間の低酸素状態を作成し、その間の肝臓と腸管の酸素化状態の変化を測定した。次に、開腹し腹壁と肝臓の間に、近赤外光を完全に遮断する6cm×4cmの白紙を挿入し、上記と同様な実験を繰り返した。送・受光プローブ間の距離を3cmにした場合と比べて5cmに調節したほうが総Hb濃度は高く観測された。これは、送・受光間の距離が長くなることで測定範囲が増加するためと思われた。体表から肝臓領域の信号が確実に検出できているのかを検討する実験では、体表より肝臓領域のtHb濃度を測定し、次に、体表と肝臓の間に光を透過させない紙(白色)を挿入した状態で、同じ測定を行った。その結果、体表と肝臓の間を遮断しない場合と比べて、遮断した場合にはHb由来の信号量が明らかに低下していた。このことは、体表から腹部に入射した近赤外光は、肝臓まで到達し肝臓領域のHb由来の信号を検出できることを示唆するものであった。このことより、TRSを用いて体表より腹部臓器の酸素化状態を測定することは可能であり、腸管虚血においても体表より検出できる可能性が示唆された。
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