2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜創傷治癒に特有なシグナル伝達の探索 -皮膚と口腔粘膜上皮の相違-
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23659857
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
前田 健康 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 健次 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80242436)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ケラチノサイト / PI3K/Aktシグナリング / PTEN / 創傷治癒モデル / 細胞運動能 |
Research Abstract |
口腔粘膜は皮膚に比べ瘢痕化が少ない創傷治癒過程を示すことから、そのメカニズムを分子生物学的に解明し、新たな創薬への突破口に結び付かせたいとすることを基本理念としており、本研究で着目したのはPI3K/Aktシグナリング経路である。このシグナル経路は、インビボの創傷治癒モデルで活性化されているということがわかっているので、インビトロでこのシグナル経路を活性化させることによって、口腔粘膜上皮と皮膚上皮細胞で起こる反応の違いを解析するというアプローチを目ろんでいた。申請書では、(1)外来性の成長因子、(2)シグナル経路内のPTENタンパク阻害、そして、(3)この経路非依存性のmTOR活性化剤を用いることにしていた。結果、予定以上の数にのぼる口腔粘膜上皮細胞で創閉鎖能実験をおこなったところ、用いた薬剤による統計学的有意差が出現しなかった。このことから、計画には記載していなかったがMTTアッセイ法をもちいて、細胞の増殖能を確認してみたが、こちらはほとんど増殖能に差が生じていないことを確認した。逆にMTTアッセイではラパマイシンを添加した群では有意差をもって増殖能の減少が認められたため、細胞の遊走能に関してはレプチンの効果は極小であることが示唆された。とはいうものの、レプチンは細胞膜上のレセプターを介してシグナルが細胞内に伝達されるため、まずは細胞膜上のレプチンレセプターの発現をウェスタンブロットと細胞組織化学による検討の途中である。一方来年度の実験計画を早期に実現するための、口腔粘膜上皮細胞と口腔粘膜線維芽細胞の3次元共培養によるインビトロ口腔粘膜モデルの作成は確立してあるので、細胞のPI3K/Aktシグナリング経路を活性化する的確な薬剤の確保だけが課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
使用薬剤間で、申請時に予想された有意差のある違いを見出すことができていないため、、予定している第2ステップに進めずに今年度は終わってしまったことからこのような自己評価にとどまった。ただ、この遅れは基本的に細胞そのものの増殖能のチェッを行った結果であり、後戻り的な実験ではあったものの、本実験で計画している実験的手技や方法に問題はないことを遅れながらも確認できた意義は大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞膜上のレプチンレセプターの発現をウェスタンブロットと細胞組織化学による検討を早期に終了させ、その結果レセプターの発現があった場合は、実験条件として用いるリコンビナントレプチンの濃度を唾液中に含まれる濃度より高倍にして実験を進め、発現がほとんどなかった場合は、レプチンを用いることは本実験では中断し、ヒトリコンビナントKGF(FGF-7)により実験を継続したい。その後早急に3次元培養モデルを用いて研究を推し進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
明らかにPI3K/Aktシグナリング経路を活性化する成長因子を手に入れて実験を進める。これら試薬に加え、口腔粘膜上皮細胞培養用の培地やプラスチック製品、ウェスタンブロットやフローサイトメトリー分析用の抗体やそれに付属する試薬、および創閉鎖アッセイ用のキット、組織学的標本作成用の消耗品の購入にあてる。
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