2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659871
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 渉 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 特任准教授 (60372257)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 概日リズム / 視交叉上核 / 生体リズム / 脳温 / in vivo 記録 / 行動リズム / 体内時計 |
Research Abstract |
1 日24 時間の時を刻む体内時計機構はその最小単位が単一細胞内に内在する時計遺伝子転写翻訳ネガティブフィードバックループにあることが明らかになっている。単一時計神経細胞間のサーカディアンリズムカップリング、及び、中枢時計(視床下部・視交叉上核)と局所脳機能領域間とのサーカディアンリズムカップリングを中継する要素は未だ同定されていない。本研究では、「温度」をユニバーサルに作用するリズム共役要素と仮定する。In vivo における自由行動下マウスの脳温多点同時連続記録系を確立することにより、恒温動物脳温の変動を明らかにして、リズム共役要素として作用する可能性を検証する。さらに「温度」の神経細胞間カップリングを検証するin vitro 実験系を構築するための基礎データ取得を目指すものである。 平成23年度は、In vivo自由行動下マウスの脳温多点同時連続記録系を確立した。Beta Therm社製マイクロサーミスタチップを針型サーミスタプローブに加工した。プローブ挿入時の脳組織損傷を最小限に抑えるためプローブの先端は500μm以下になるようデザインし、脳の偏側(左側に固定)にプローブを挿入することにより、自由行動下記録を達成した。サーミスタチップで検知した電圧変動は、1分毎に既成のデータロガまたはA/Dボードを介したコンピュータに記録し、脳温変動に換算可能であることが明らかになった。プローブ埴立手術後一定の回復期間をおくことで、マウス行動量は手術前と同等にまで回復し、行動のサーカディアンリズムパラメーターに術前術後の違いは生じていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、新規生体パラメーターの測定系構築を研究目的としており、遺伝子改変モデル動物として汎用されるマウスを対象とした深部脳温多点同時連続記録系は世界でも類をみない。H23年度の研究実施により、この新規測定系の構築に成功し、2週間に及ぶ自由行動下マウス深部脳温の高精度連続記録を達成した。 挑戦的課題であるにも関わらず、当初の計画以上の進展が可能になった背景には、十分な予備実験、基盤実験系となるin vivo 多神経活動記録が成功していたことがあげられる。神経活動電位と脳温という一見異なる生体パラメーターであるが、それらをほぼ同形式の測定系で記録可能としたところに今回の研究進展をなしえた要因がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に確立した脳温測定系を用いて、in vivo概日行動リズム制御機構の解明を行う。概日リズム発振の分子機構モデルにおいて、時計遺伝子Cryptochrome (Cry) はフィードバックループの根幹を形成する遺伝子の一つであり、Cry1 KOマウスはサーカディアン行動リズム周期の短縮(22時間)、Cry2 KOマウスは周期の延長(24.3時間)、Cry1/Cry2 KOマウスはサーカディアンリズムの消失が知られている。一方で、上記3系統の遺伝子改変マウスは、明暗環境サイクル下ではいずれの系統でも夜行性の行動リズムを示し、体内時計の24時間同調が達成されていることが示唆される。微小脳領域における脳温変動と体内時計の位相関係(タイミングの相関)を明らかにするため、以下の行動実験と脳温の同時計測を行う。(1)Cry1, Cry2 KOマウス輪回し行動リズムの光位相反応(2)Cry1, Cry2 KOマウス24時間同調リズム位相の違いと脳温変動(3)Cry1/2 KOマウスの行動リズムと脳温変動以上得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験設備は整っているため、新規備品購入の必要はない。物品費は温度プローブの消耗部品となるサーミスターチップ購入費、遺伝子改変動物維持費等が必要となる。論文作成にあたり、最新情報を収集するための学会参加旅費、研究協力者との打ち合わせ旅費の支出を計画している。論文英文校正費用、印刷費用等をその他の直接経費として支出計画している。
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Research Products
(12 results)