2011 Fiscal Year Research-status Report
PLAG-免疫グロブリンキメラ蛋白による抗腫瘍免疫の誘導
Project/Area Number |
23659884
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
沢 禎彦 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (70271666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 邦久 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (90105685)
敦賀 英知 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (30295901)
加藤 幸成 山形大学, 医学部, 准教授 (00571811)
畠山 雄次 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (40302161)
岡 暁子 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60452778)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 口腔癌 |
Research Abstract |
リンパ管内皮細胞抗原として知られるポドプラニン(podoplanin, PDPN)は腎糸球体ポドサイトで初めて同定されたムチン様蛋白である。近年、PDPN は頭頸部扁平上皮癌の浸潤領域に強く発現し、癌幹細胞性形質発現を誘導している可能性を示す報告が相次いでいる。PDPNはplatelet agglutination domain (PLAG)で血小板膜蛋白CLEC2と結合するので、PDPN陽性腫瘍細胞は周囲に血小板を凝集させて免疫細胞から逃れることができるとされる。本研究では、PDPNを標的とする頭頸部扁平上皮癌の新しい免疫療法の確立を目指し、PDPNと免疫グロブリンG Fcのキメラ蛋白による、PDPN陽性腫瘍細胞の頭頸部担癌マウスにおける抗腫瘍免疫の誘導を検討することを目的として行われた。 本年度の研究成果として、1)マウスおよびヒトPDPNと、マウスおよびヒト免疫グロブリンG Fcとのキメラ蛋白を開発した。2)PDPN のPLAG領域に対する結合性新規抗体として、ラット抗ヒトPDPN抗体NZ-1.2, およびラット抗マウスPDPN抗体PMab-1を開発した。市販されている抗体D2-40はPLAGに結合しない。凍結切片でこれらの特異性を確認した。従ってこれら新規抗体のヒト型は、ヒト生体内において、腫瘍細胞と血小板の接着、すなわち腫瘍細胞の転移を阻止する抗ガン効果をもたらす可能性が考えられる。3)このような癌抗原PDPNと抗体による抗ガン治療の副作用の確認のため、PDPN発現臓器を検討し、これまで報告のある腎と肺以外に、歯胚の象牙芽細胞とエナメル芽細胞、唾液腺筋上皮および脈絡叢上皮と脳室上衣細胞における発現を見出した。このようなことから、抗腫瘍効果判定は、腎、肺、および脳と歯胚形成への影響を合わせて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、1)マウス/ヒトPDPNとマウス/ヒト免疫グロブリンG Fcのキメラ蛋白を作製した。これによって、マウス免疫源を確保したことから、マウスへの抗原感作実験に入る事が出来る。免疫源PDPNの蛋白精製とFcキメラ蛋白の確保は最も重要な実験開始目標であり、これをクリアした。2)PDPN のPLAG領域に対する結合性新規抗体として、ラット抗ヒトPDPN抗体NZ-1.2, およびラット抗マウスPDPN抗体PMab-1を開発した。これによって、マウスへの抗腫瘍抗体実験に入る事が出来る。3)このような癌抗原PDPNと抗体による抗ガン治療の副作用の確認のため、PDPN発現臓器を検討し、これまで報告のある腎と肺以外に、歯胚、唾液腺および脈絡叢における発現を見出した。抗ガン免疫治療法の開発では、癌抗原が正常組織ではどこに発現するのかを始めに明らかにしておく必要があり、その目標をクリアした。 以上の研究成果により、コンベンショナルマウスに移植したマウスPDPN陽性B16-F10マウスメラノーマなどのマウスPDPN発現腫瘍、あるいはヌードマウスに移植したヒトPDPN陽性ヒト癌細胞に対する、マウス/ヒトPDPNとマウス/ヒト免疫グロブリンG Fc のキメラ蛋白、ならびにNZ-1.2, およびPMab-1の投与による腫瘍縮小効果を検討し、PDPN 陽性腫瘍への抗腫瘍免疫治療のマウスモデル実験に着手することが出来た。また、副効果の判定として、腎、肺、歯胚、唾液腺および脈絡叢における組織破壊の検討に着手することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
1)マウス/ヒトPDPNとマウス/ヒト免疫グロブリンG Fcのキメラ蛋白をマウス腹腔、頬粘膜、頭蓋冠皮下に投与して、PDPNで免疫感作する。このことによる腎、肺、歯胚、唾液腺および脈絡叢における組織破壊の有無に関して、形態分析によって明らかにして行く。2)口腔癌の発現とは矛盾して、すべての市販の口腔癌細胞株はPDPNを発現しない。PDPN強制発現プラスミドの導入による安定したPDPN発現口腔癌細胞は完成している。これをヌードマウスに移植し、 PLAG領域に対する結合性新規抗体NZ-1.2, およびPMab-1による腫瘍縮小を検討する。市販のD2-40はPLAGを認識しない。3)1)と2)を合わせて行うことによる、精製PDPNの癌ワクチン効果、ならびに新規開発抗体の抗ガン作用を検討する。この時の、PDPN 陽性腫瘍への抗腫瘍免疫治療の副効果の判定として、腎、肺、歯胚、唾液腺および脈絡叢における組織破壊についても、形態分析によって明らかにして行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)抗体、プライマー、薬剤、シャーレ、ピペット等の消耗品の購入2)種々のヒト腫瘍細胞の購入3)学会発表の旅費および印刷代
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Research Products
(19 results)