2011 Fiscal Year Research-status Report
水溶性カルボジイミドを応用した象牙質コラーゲンの架橋促進による歯の強化法の開発
Project/Area Number |
23659888
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 美加子 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40271027)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 象牙質 / 機械的強度 / コラーゲン / 分子間架橋 / 水溶性カルボジイミド |
Research Abstract |
水溶性カルボジイミドによる象牙質コラーゲンの架橋形成の評価と象牙質の機械的強度に及ぼす影響の検討1)ヒト象牙質棒状試料の採取と水溶性カルボジイミド処理:ヒト新鮮抜去第3大臼歯の歯冠咬合面中央より、象牙細管の走行方向を試料の長軸に対して垂直または平行に規定した棒状試料を採取し、濃度0-1M、pH3-8、温度25-80℃、および作用時間0-120分の異なる条件のカルボジイミド水溶液に浸漬した後、コラーゲン架橋の定量および機械的強度試験に供した。2)水溶性カルボジイミドによる象牙質コラーゲンの架橋形成の評価:カルボジイミド処理した象牙質を液体窒素にて凍結粉砕し、0.5M EDTA にて1週間脱灰の後、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(DGU20A3、島津製作所)を用いて、カルボジイミド処理前後の象牙質の未成熟架橋、成熟架橋、および老化架橋を定量する。その結果、カルボジイミド処理群で成熟架橋、および老化架橋が優位に増加していた。3)機械的強度の解析:カルボジイミド処理した象牙質棒状試料を金属ホルダーに固定し、万能強度試験機(オートグラフAG-IS、島津製作所)あるいは卓上型万能強度試験機(イージーテスト、島津製作所)で、試料が破壊に至るまで圧縮負荷を加え、破壊荷重および変位量を記録し、曲げ強さ、引張り強さおよび破壊エネルギーを算出した。その結果、カルボジイミド処理群で引っ張り強さが有意に増加していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水溶性カルボジイミドによる象牙質コラーゲンの架橋形成の評価と象牙質の機械的強度に及ぼす影響の検討につき、まず、ヒト象牙質棒状試料の採取と水溶性カルボジイミド処理条件を確定することができた。特に濃度は0-1M、pH7、温度35-40℃、および作用時間15分の処理条件が臨床応用を視野に入れた場合、適切であると考えられた。さらに、水溶性カルボジイミドによる象牙質コラーゲンの架橋形成の評価についても、カルボジイミド処理群で成熟架橋、および老化架橋が優位に増加していることを確認し、コラーゲンの架橋形成による歯質強化法での展開に大きく前進できた。今後予定している多面的な機械的試験による強化効果の検証に円滑に移行できると考えている。複数種類の架橋形成の割合およびコラーゲン分子化学変化の詳細な検索への初期段階の研究を、予定どおりに遂行できたものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、水溶性カルボジイミドによる象牙質機械的強度の増加につき、曲げ試験の他にも、引張り試験、剪断試験あるいは疲労破壊試験を実施し、多面的に強化効果評価する予定である。多面的に機械的試験を実施することにより、水溶性カルボジイミドによる象牙質の特性をより詳細に把握できると期待している。 さらに、水溶性カルボジイミドによる象牙質の強化メカニズムの分子レベルでの多面的分析する方法として、1)原子間力顕微鏡を用いたナノインデンテーションにより微小領域での機械的性質の変化の分析。2)エックス線回折による象牙質コラーゲンの分子配列の分析、3)顕微赤外分光分析による象牙質コラーゲン分子の基軸構造の分析、および4)顕微ラマン分光分析による象牙質コラーゲンの分子構造の分析、を展開するよていである。このように、複合的な分子変化の解析を実施することで、化学変化の実態をよりつぶさに明らかにできるため、カルボジイミド処理によるコラーゲン分子構造変化と象牙質強化メカニズムの関連を総合的に分析することが可能である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
水溶性カルボジイミドによる象牙質の機械的強度評価および強化メカニズムの分子レベルでの多面的分析について, 物品費は強度試験および分子構造変化分析に必要な実験器材および消耗品の購入に充てる。具体的には顕微鏡資材、ガラスプラスチック器具などに加えて、データ解析用パーソナルコンピュータおよび画像データ保管メディアに当てる予定である。また、旅費は、国内および国際学会での成果発表および資料収集に使用する予定である。具体的には、沖縄で開催される日本歯科保存学会春期学術大会や広島で開催される日本歯科保存学会春期学術大会での資料収集および成果発表を予定している。さらに、その他として、「原子間力顕微鏡を用いたナノインデンテーション」「顕微赤外分光分析による象牙質コラーゲン分子の基軸構造の分析」の外注委託試験費用として使用する予定である。いずれも、大阪市立工業試験研究所での試験を委託する予定であるが、1回の一連の試験にかかる費用が11万円程度であることより3回程度試験を実施することを想定して計上している。
|
Research Products
(7 results)