2011 Fiscal Year Research-status Report
創製した人工ペプチドのバイオミネラリゼーション能による挑戦的歯髄治療
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23659892
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
井上 孝 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (20125008)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | バイオミネラリゼーション |
Research Abstract |
歯髄は、保護する歯牙硬組織障害時に患者の疼痛の問題から保存することが困難な場合が多い。しかし、抜髄は生体にダメージを与えるのみならず、残髄、感染源、根充材などにより2次的に根尖病巣を作る場合も少なくない。本研究では、歯髄をそのまま石灰化させるという挑戦的プロジェクトである。そのために、歯髄の構成要素の大部分を占めるコラーゲン、神経線維および血管に結合しバイオミネラリゼーションを起こすペプチドアプタマーを創製し、歯髄内に投与することで、歯髄の生体内石灰化を促し、歯髄保存治療に革命を起こすことである。。我々は、すでにチタンとジルコニアに指向性をもったアプタマー(特定の分子と特異的に結合する核酸分子やペプチド)の一つを発見し誌上発表した(K.Hashimoto,M, Yoshinari,K.Matsuzaka, T.Inoue, K.Shiba, Dental Material Journal,30(6):935-940、 2011、Kokubun K., Kashiwagi K., Yoshinari M., Inoue T., Shiba K. Biomacromolecules, 9:3098-3105, 2008).これらのアプタマーに、既知の抗菌ペプチドとを融合させ人工タンパク質を創製しin vitro, in vivoによる機能発現を確認した。平成23年度は、同様の方法を用いて歯髄の諸組織(特に象牙質、コラーゲン、神経線維、血管)に指向性を持つアプタマーを創製し、このアプタマーを介して、バイオミネラリゼーションを起こすペプチドを固相化できれば、歯髄内石灰化による歯牙の保存を可能にできる。現在象牙質に特異的につくアプタマーの検索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工タンパクの創製は既に我々の得意分野となり、チタンとジルコニアに指向性をもつアプタマーは開発し、チタン結合人工タンパクにRGDモチーフを結合し、よりよい骨結合ができることを報告してきた。また、本年度は、同様のチタン結合人工タンパク質にBMPを融合させた人工タンパク質を創製し、現在雑誌に投稿中である。本研究の目的である、歯髄内構造物に指向性をもつアプタマーを検索すれば、目的の達成に到達することは間違いない。現在、象牙質器質につくアプタマーの選定は行っているが、in vitroにおいて、歯髄内のコラーゲン、血管、神経の分離を行うことに手間取っており、いまだin vitroの実験を続けているのが現状である。目的達成には、創製された人工タンパク質が歯髄の諸組織に結合することにより、歯髄内石灰化が惹起され、歯牙の保存に寄与できる可能性が大きいが、人的資源の不足により若干の遅れが生じている。今後は大学院生、PFなどを有効的に活用し、目的達成に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に終了しておかねばならない、象牙質、コラーゲン、神経繊維、血管に結合するペプチドアプタマーを創製する。その後バイオミネラリゼーションを起こすアプタマーを選定する。In vitroにおける各組織におけるバイオミネラリゼーションを確認する。時間的余裕がないが、In vivoにおける歯髄のバイオミネラリゼーションを確認することで、トランスレーショナルリサーチにつなげる
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に作成叶わなかったペプチドを見つけることを最優先させる。その後、直ちにIn vivoで作製したバイオミネラリゼーションを起こすペプチドアプタマーの機能実験を行う。(1)作製した各組織結合ペプチドを検索した適正人工体液中に溶解させる。ペプチドは、象牙質結合、コラーゲン結合、神経結合、血管結合ペプチド単独と混合物を用いる。(2)ビーグル成犬を静脈麻酔下において実験を行う。(3)実験群には各種ペプチドを溶解させた人工体液を33ゲージの注射針をつけた注射筒により組織内へ注入する。対照群は、緩衝液のみのものとする。対象組織群:コラーゲン対象:アキレス腱周囲および内部に注入に注入する。動静脈対象:腹部大動脈、腹部大静脈周囲および外膜下に注入する。神経対象:坐骨神経周囲および内部に注入する。実験組織群:前歯、前臼歯をタービンにより露髄させ注入する。対照組織群:コラーゲン、血管、神経を含む皮下組織に注入する。(4)経時的に動物を塗擦し、各種ペプチドの注入された組織を取り出し、組織標本を作製し生体組織内石灰化の状態を検討。(5)トランスレーショナルリサーチの立案し、本研究を終え、臨床実験につなげていきたい。
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