2011 Fiscal Year Research-status Report
マウスピース型加振装置を用いた微小振動の付与による顎骨増強
Project/Area Number |
23659920
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藏田 耕作 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00368870)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 歯学 / 生物・生体工学 / 再生医学 / 微小振動 / 骨リモデリング |
Research Abstract |
本研究では,人工歯根埋入が困難な低骨量患者への対策として,「高振動数かつ低振幅の微小振動をマウスピース型の加振装置によって顎骨に付与し,骨増強を図る」という手法の開発を目的として実験を行った. まず,マウスピース型の加振装置を開発した.加振装置は電磁式振動素子,加速度センサー,共振点を探査するためのロードセルから構成されている.ロードセルの先端にはマウスピースが固定できるようにジグが取り付けられている.例えば,このジグに板バネを取り付けて加振し,周波数を5Hzから200Hzへ少しずつ大きくしながら掃引すると,共振点においてロードセル出力電圧がピーク値をとることを確認できた. マウスピースは,歯科用印象材をラット切歯に包み込んで固化させることによって,ラット個体毎に作製するようにした.作製したマウスピースを加振装置のロードセル先端に固定し,これをラットに咬合させた.ラット切歯とマウスピースの間は歯科用仮付け剤にて接着固定した.このような実験系において,周波数を5Hzから200Hzへと掃引しながら加振した.しかしながら,現在のところ,この周波数範囲内で共振点を見つけることは出来ていない. 一方,実験動物の血中にトレーサー試薬としてProcion red溶液を投与し,一定時間の加振後に薄切標本を作製してその分布を定量化した.これによって,加振が骨内物質輸送に与える影響を評価した.予備実験として,マウスの大腿骨を観察対象とし,トレーサー試薬を投与した後に周波数50Hz,振幅25ミクロンの一定条件で10分間加振した.凍結切片を作製し,ハバース管を中心としてどのくらい遠方の骨小腔にまでトレーサー試薬が輸送されているかを定量的に評価したところ,加振によって物質輸送が促進され,より遠方の骨小腔にまでトレーサー試薬が到達していることが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,1.マウスピース型の加振装置の製作,2.歯-顎骨系の振動特性や共振点を計測する方法の検討,3.骨内物質輸送の促進効果と骨構成細胞の活性効果の実証,の3つの計画を遂行する予定であった. その予定通り,ラット切歯に対して振動刺激を与えるための加振装置を構築することが出来た.周波数や加速度を制御した加振が可能であり,共振点ではロードセルの出力が変化することを確認した.すなわち,計画1は達成できた.しかしながら,マウスピースを介したラット切歯の系では共振点の探査に成功しておらず,計画2は満足できる結果が得られていない. 計画3については,骨内物質輸送をトレーサー試薬によって定量的に評価することに成功した.マウスの大腿骨を対象とした予備実験ではあるが,加振によって物質輸送が促進され,より速く,より遠方の骨小腔にまでトレーサー試薬が到達していることが明らかになった.しかしながら,このような物質輸送の促進が骨構成細胞の生理的活性にいかなる効果を与えるのか検討するに至っていない.計画3は,当初から23年度および24年度にまたがる計画であったので,これは研究の遅滞とは考えていない.加振後に薄切切片を作製して光顕観察するまでの手法は確立できたので,適切な染色方法や抗体を選択すれば,細胞活性の観点から加振の効果を確認することは容易であると思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
マウスピースを介してラット切歯を加振する系において,共振点を探索できるようにすることが最大の課題である.現在はロードセルの出力,すなわち負荷荷重によって共振点を決定しようとしているが,これに加えて,変位の計測から共振点を探す方法も試みる.共振点では変位が増幅されるので,レーザー変位計を用いて加振部の変位をモニターし,その変化を観察する. 平成24年度は,前年度からの継続計画として,3.骨内物質輸送の促進効果と骨構成細胞の活性効果の実証,さらに,4.微小振動が骨増強にもたらす効果の実証,を計画している. 計画3については,マウス大腿骨において確立した手法をラット顎骨に適用し,加振によるトレーサー試薬の輸送を定量的に評価する.共振点の探索が成功すれば,この共振点での加振,共振点からずらした条件での加振,無負荷の群で物質輸送の状態を比較する.さらに,機械的刺激の受容や骨形成に関連する因子(COX-2,プロスタグランジンE2,I型コラーゲン)について,薄切切片の免疫染色を行う.これによって,微小振動による骨構成細胞の活性効果を検討する.なお,共振点の探索がうまくいかないときには,任意に決定した数種類の周波数,振幅の条件で加振を行い,同様の実験を行う. 計画4については,ラットに対して一定時間の微小振動を2週間繰り返して与えた後,顎骨を摘出し,マイクロCTによる形態計測,pQCTによる骨密度計測,薄切標本の作製と観察を行う.これらの研究によって,マウスピース型加振装置が骨増強にもたらす効果を検討する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
加振部の変位計測によって共振点を探索する方法を試みるために,レーザー変位計を新たに購入する. その他の物品費として,実験動物ラット,薄切切片作製用の試薬と消耗品,染色試薬,COX-2やI型コラーゲン抗体などの購入費を計上予定である. また,pQCTによる骨密度計測については外部機関に委託するので,その計測委託費用が必要となる.さらに,研究成果を公表するための学会参加旅費,論文投稿料を支出予定である.
|
Research Products
(2 results)