2011 Fiscal Year Research-status Report
TIMP3による骨破壊性腫瘍での免疫抑制の病態解明と新規免疫治療法の開発
Project/Area Number |
23659946
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
日浅 雅博 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (90511337)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | TIMP-3 / TACE / 樹状細胞 / 破骨細胞 |
Research Abstract |
我々はこれまでに破骨細胞・樹状細胞の新たな分化調節機序として、蛋白分解酵素であるTNFα converting enzyme (TACE)が前駆細胞のM-CSF受容体およびRANK を切断することにより、破骨細胞分化に必須因子のM-CSFおよびRANK ligandのシグナルを遮断し破骨細胞分化を抑制し、樹状細胞分化を誘導することを示した(Hiasa M, et al. Blood 114:4517-4526, 2009)。TACEは膜結合型として合成されるTNFα、β-APP、TGFα、L-セレクチン等を細胞外で切断・遊離する多機能酵素であり、炎症性疾患、アルツハイマー病や白血球のローリング・浸潤に関与する可能性が指摘されている。その活性を直接制御する因子については不明のままであったが、近年Tissue inhibitors of matrix metalloproteinase 3(TIMP3)がTACEを効果的に抑制する因子としての機能をもつことが見いだされ脚光をあびている(Black et al, Nat Genet. 36(9):934-5, 2004)。 骨破壊性悪性腫瘍での骨髄微小環境は骨髄間質細胞が豊富に存在し、その産生する IL-6やTGF-β等のサイトカインにより腫瘍増殖に適した環境を形成している。我々は予備的検討により骨髄微小環境を構成する細胞群の中で、骨髄間質細胞がTIMP3を発現し多量に産生することを見いだしている。そこで本研究計画では TACEを中心とした破骨細胞・樹状細胞分化制御機構に対して、骨髄間質細胞が豊富に産生するTIMP3の担う役割を明らかとし、骨破壊性悪性腫瘍の形成する骨髄微小環境や免疫抑制の病態解明を行うことで、これを分子標的とした新規治療の開発・評価を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでの研究成果を基盤とし腫瘍進展の抑制と骨病変の進行防止・改善のために、腫瘍抑制効果をもたらすより効果的な破骨細胞抑制法と樹状細胞分化誘導法の開発を、免疫抑制をもたらす原因因子として骨髄間質細胞の産生するTIMP3の役割に焦点を絞り、以下の点を明らかにした。1)マウスおよびヒト検体の骨髄間質細胞がもたらす樹状細胞分化抑制効果について検討したところ、マウスおよびヒト骨髄間質細胞との共培養により単球からの樹状細胞分化は有意に抑制された。2)骨髄間質細胞の産生するTIMP3との樹状細胞分化抑制との関連性の検討として、骨髄間質細胞のTIMP3をsiRNAでノックダウンする実験系用いた。単球のTACE活性を蛍光色素を用いたenzyme activity assayにて計測すると骨髄間質細胞と共培養すると単球のTACE活性の低下を認めたが、TIMP3 siRNAを導入した骨髄間質細胞との共培養では単球のTACE活性の低下が認められかった。さらにTIMP3 siRNAを導入した骨髄間質細胞との共培養では単球からの樹状細胞分化抑制は認められなくなった。3)上記と同様の実験をTIMP3 KOマウス間質細胞を用いて行ったところ、同様の結果を得た。4)骨破壊性腫瘍に対するTIMP3抑制の優位性が考えられたため、in vivoでの腫瘍進展に対する治療効果を動物モデルで評価することを目的に多発性骨髄腫のin vivoモデルの構築を行った。治療効果については現在検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
骨代謝に関連するデータの総括、臨床的示唆については当大学生体情報内科学 松本俊夫教授、安倍正博准教授にご協力頂く。大学院生による各実験の人的支援と研究体制は構成されており、各実験に必要な設備(PCRマシン、プレートリーダー、軟エックス線撮影装置、マイクロCT等)についても学内施設として既に整備されている。学外施設とも必要に応じて研究協力による効率的な支援を受け遂行する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品ついては本研究計画・方法で述べた実験を遂行するにあたり必要不可欠な品目に使用する。これら消耗品の積算金額については、研究期間を通じて使用できる十分な量を確保するための金額を積算した。本研究計画は、各種サイトカインを用い、siRNAの導入試薬や各種抗体も必要である。そのために、研究年を通じ必要な量を確保するため必要な金額を計上した。マウスを用いた実験計画を含むため、研究年を通じた動物の飼育費用、購入費用等が必要である。至適投与量の決定などに実験を4から5回繰り返すことが見込まれる。旅費、印刷費用等に関しては、年間数回の海外発表と国内調査・研究費を考慮し使用する。
|
Research Products
(9 results)