2011 Fiscal Year Research-status Report
扁平上皮癌におけるMFG‐E8の役割-癌細胞からの産生とEat meシグナル
Project/Area Number |
23659948
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
北村 直也 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (70351921)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (00200824)
笹部 衣里 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (40363288)
吉村 友秀 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80452697)
李 康広 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (70587526)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 口腔扁平上皮癌 / MFG-E8 / LAK細胞 |
Research Abstract |
近年、口腔癌の治療において機能温存を目指した放射線併用超選択的持続動注化学療法などが積極的に行われるようになってきている。しかしながら、口腔粘膜炎や骨髄抑制などの重篤な副作用にもかかわらず完全寛解に至らない症例も認められ、比較的精度の高い治療効果予測判定方法の開発が求められている。これまでわれわれは、アポトーシス細胞の"Eat me signal"に関与しているMilk fat globule factor-E8 (MFG-E8)が口腔扁上皮癌における化学・放射線・免疫療法の効果予測因子となり得る可能性を明らかにしてきたが、今回は、株化口腔扁平上皮癌(OSC)細胞においてMFG-E8の発現と化学・放射線・免疫療法に対する感受性との関係を検討し報告する。 OSC細胞はMFG-E8を発現しているものの、その発現強度は細胞株によって異なっていた。さらに、MFG-E8の発現強度と抗癌剤およびγ線に対する感受性との間に関連は認められなかったものの、IL-2で活性化した細胞傷害性リンパ球(LAK細胞)に対する感受性との間に正の相関が認められた。OSC細胞をγ線で処理すると、MFG-E8の発現ならびに分泌が亢進するとともにLAK細胞に対する感受性が増強し、この感受性の増強はMFG-E8のノックダウンあるいはAnnexin-VによるMFG-E8のブロッキングにより抑制された。 以上より、MFG-E8を強発現しているOSC細胞が化学・放射線・免疫療法に対して高感受性である機序として、MFG-E8はLAK細胞によるOSC細胞の傷害を増強すること、さらには、γ線はOSC細胞のMFG-E8の発現を増強することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、まず臨床検体を用いて臨床データとの関係を確かめ、その後、培養細胞を用いた研究でより詳細なメカニズムの解明を行う予定であった。しかし、臨床材料が充分に集まらなかったため、実際には培養細胞を用いた研究を先行させたが、その部分の研究は予定通り実行できたことより、概ね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、口腔扁平上皮癌患者の治療前後における生検材料において、MFG-E8、Integrin (αVβ3、 αVβ5)、VEGF、VEGF-Rの発現を、さらには、浸潤している貪食細胞(マクロファージ、樹状細胞)の数、局在、毛細血管の数、分布様式を免疫組織学的に検討するとともに、TUNEL法およびHoechst33258染色を用いてアポトーシス細胞数を調べる。その上で、これらの結果を腫瘍の浸潤様式、頸部リンパ節および遠隔転移の有無、化学・放射線・免疫療法の効果等との関連でもって検討する。 さらに、ヌードマウスの舌に、MFG-E8発現およびMFG-E8 siRNA発現ベクターを導入した細胞を移植し、腫瘍を形成させた後、抗癌剤の投与およびγ線照射を行なう。その後、腫瘍の大きさを経時的に測定し、コントロールベクター導入細胞における結果と比較する。さらに、処理後の腫瘍を用いて、腫瘍細胞の浸潤様式、生存癌細胞の残存様式、血管形成等についての検討、ならびに、MFG-E8、Integrin(αVβ3、αVβ5)、VEGF、VEGF-Rの発現について免疫組織学的に検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のほとんどは試薬、実験動物に使用し、ごく一部を成果発表の経費に使用予定である。
|