2011 Fiscal Year Research-status Report
超音波ハプティックセンサ技術を用いた齲蝕リスク評価装置の臨床応用
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23659962
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小関 健由 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80291128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 亮一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40547254)
伊藤 恵美 東北大学, 歯学研究科(研究院), 技術一般職員 (80596817)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | う蝕 / 石灰化 / 超音波 / リスク / 診断 |
Research Abstract |
超音波ハプティック (触覚) センサ技術は、生体組織の表面の硬さ(突っ張り)度合いを客観的に評価する画期的な技術である。我々の研究グループは、エナメル質と象牙質の初期齲蝕の計測をこの手法を用いて実施し、非常に高精度の硬組織表層の解析が可能になることを発見した。本研究では、健全歯の段階での超音波石灰化度測定値を用いて将来の齲蝕発生のリスク評価への応用が可能かを臨床にて検証する。さらに、フッ化物の応用の結果が歯の硬組織正面に及ぼす影響と超音波石灰化度測定値の変化に関する検証も同時に実施する。これまで齲蝕リスクの宿主側要因の評価は唾液の流出量と緩衝能しか評価する手法が無かったが、超音波石灰化度測定装置を用いると、硬組織の健常状態からの生体組織の強度判定(物理的耐久性)が可能となり、全く新しい齲蝕予防策などの研究分野を切り開く可能性がある。う蝕発生の宿主側要因で最重要と考えられるエナメル質の耐酸性は、エナメル生検法などの報告はあるが侵襲的であり、臨床に応用可能な手法は皆無であった。しかしながら、エナメル質は均一なヒドロオキシアパタイト結晶の塊ではなく、歯の高速切削時には患者によって歯の硬さに大きな違いがあることは、皆が知る歯科医師の臨床経験である。この硬さの違いを、これまでの我々の研究で、超音波ハプティックセンサ技術で瞬時に非破壊的に、しかも痛みが無く測定が可能にしたのが超音波石灰化度測定装置である。この新規な測定装置を用いると、歯や骨を中心とした硬組織の健常状態からの生体組織の強度判定(物理的耐久性)が可能となり、全く新しい疾病予防策の策定などの研究分野を切り開くと共に、これまで唯一評価ができなく誰もが感じている、齲蝕と硬組織の齲蝕耐性を直接検索することにより、齲蝕リスク診断での全く新しい評価項目が確立される可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度には、(1)口腔内齲蝕リスク因子の検査法の確立の実験、(2)詳細な口腔内齲蝕リスク因子と現在齲蝕罹患歯数との関連の検索の実験を実施した。(1)口腔内齲蝕リスク因子の検査法の確立の実験では、測定する健全歯の本数を確保するために、実際の集団歯科健康診査の場で超音波石灰化度測定器による齲蝕リスク評価を実施しなければならない。よって、効率よい集団歯科健康診査のシステムを構築することを目的として、マークシートを用いた歯科健診票入力の手法を確立させた。先行運用実績もある本歯科健康診査結果登録システムを活用すると、効率よく歯単位のデータベース化が可能となり、経時的な歯の状態の変化の評価を実施するには必須の口腔健康の管理システムである。データベースで処理する情報管理システムの確立から、今後の膨大な歯の変化を追跡するための方策が確立した。また、(2)詳細な口腔内齲蝕リスク因子と現在齲蝕罹患歯数との関連の検索では、制作したデータベースの活用を考え、既存の歯科健康診査の結果を解析して、唾液中の成分解析とう蝕リスクの関連を検索した。これは実際の超音波石灰化度測定値を含む口腔内データを入力した際のリスク検出の手法を行ったととに、これまで報告のある因子が抽出されることを確認した。一方で、超音波石灰化度測定器は室温によって基本発振周波数が変動するので校正作業が必要である。しかしながら、当教室所有の超音波石灰化度測定器は室温変化による読み出し値の変動に対する校正作業中に動作が不安手になり、超音波測定子の再制作を余儀なくされた。測定子である超音波ハプティックセンサはオーダーメイドであり、その再制作にはある程度の時間が必要になり、結果的には実験の進行が停滞して計画していた実験の達成度に問題を残した。現在は修理が完了しているので、実験の再開と平成23年度の実験の未完了の部分を至急に完了させて行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、当研究室で所有する超音波石灰化度測定器の超音波ハプティックセンサの故障により平成23年度の実験の一部が未完了の状態である。この部分のデータと解析結果は、平成24年度の実験に直接影響を与えるので、平成24年度の8月までに完了させ、同時に平成24年度の実施計画である、(3)抽出された口腔内齲蝕リスク因子による大規模横断調査を同時に実施する。これまでの(2)詳細な口腔内齲蝕リスク因子と現在齲蝕罹患歯数との関連の検索の実験のデータ解析から、(3)抽出された口腔内齲蝕リスク因子による大規模横断調査に必要な基礎的データは一部収集が完了しているので、同時に実施しする(2)詳細な口腔内齲蝕リスク因子と現在齲蝕罹患歯数との関連の検索の実験の結果の統計処理を行いながら、当研究室の実施する歯科健康診査の場で、データ収集を行っていく。以上から、当初の実験計画は以下のように変更を加える。平成23年度実施している、(1)口腔内齲蝕リスク因子の検査法の確立、及び、(2)詳細な口腔内齲蝕リスク因子と現在齲蝕罹患歯数との関連の検索は、平成24年度前期継続実施実施とする。(3) 抽出された口腔内齲蝕リスク因子による大規模横断調査の研究は、平成24年度実施実施開始とする。本申請の研究に引き続いて実施する継続研究として、(4) 齲蝕リスク評価児童の追跡調査の実験を行う。現在の歯科健康診査のデータベースを考えると、この変更した実験計画は平成24年度に当研究室サイドでは問題なく実施可能であるが、歯科健康診査を実施する場を探す際には、時間的制約を考えて実施しなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に実施する予定の実験の内、(1)口腔内齲蝕リスク因子の検査法の確立の実験、(2)詳細な口腔内齲蝕リスク因子と現在齲蝕罹患歯数との関連の検索に関して、積み残しの実験を実施する。即ち、再度超音波石灰化度測定器の動作確認と温度校正を実施した後に、石灰化測定値の読み取り値の正確性を確認した的に、う蝕の発生要因に関する疫学調査調査の調査項目の測定法の確認を行う。他のう蝕リスク評価法との関連性の検索は、歯垢の付着量評価、遺伝子増幅を用いた総菌数やう蝕原性細菌の菌数を算定する細菌学的検査、生活習慣に関する調査から食生活に関する調査など、フッ化物の応用、間食、生活リズム、仕上げみがきや離乳時期などの様々な現行知られている齲蝕発生に関する因子に関して質問紙調査を実施し、齲蝕リスク評価に応用可能な指標を選び出す。この実験は平成24年度の前期中に完了させ、同時に重ねるようにして平成24年度実施予定の(3)抽出された口腔内齲蝕リスク因子による大規模横断調査の研究を実施する。対象者と対象者が未成年であればその保護者に十分な説明を行い書面での同意を得た後に実施する。これらの結果を使用して得られた臨床データを評価して、年齢性別やう蝕発生に関わるせ生活習慣等の因子を調整して、う蝕発生と石灰化測定値に関連を検索する多変量解析を実施する。この横断調査で超音波石灰化度測定器による測定法の有効性とリスク評価の予知性を確定する。さらに、現行の齲蝕リスク評価法との比較を実施して、超音波石灰化度測定と組み合わせて、より予知性の高くこれまで以上の精度の齲蝕リスク評価法を設定・検証する。
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