2011 Fiscal Year Research-status Report
機能性糸を用いた生体硬組織・軟組織の完全清掃法の開発と臨床への応用
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23659981
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 恵美 東北大学, 歯学研究科(研究院), 技術一般職員 (80596817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 健由 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80291128)
田浦 勝彦 東北大学, 大学病院, 講師 (90005083)
細川 亮一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40547254)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | デンタルフロス / 機能性糸 / 歯垢 / 清掃性 |
Research Abstract |
(1)細菌性バイオフィルムである歯垢の除去効率の評価法の確立機能性糸の細菌性バイオフォルムの除去効率を評価するために一定の張力の糸を均等な接触圧でバイオフィルムに押しつけて、一定速度と移動距離を擦過するシステムの構築を行った。細菌性バイオフィルムの実験モデルには、ショ糖添加培養液中で培養された齲蝕原性細菌のミュータンスレンサ球菌のバイオフィルムを使用し、バイオフィルム擦過除去評価実験システムの試料台に合わせた固体平面上に上記の細菌にて、バイオフィルムを培養・生成した。細菌性バイオフィルムの除去効率の評価には、生成した細菌性バイオフィルムを試験糸にて規格化擦過を行い、表面に残ったバイオフィルムを歯垢顕示液で染色・洗浄後に規格化写真撮影を実施して、その色の付着の有無、もしくは濃淡を計測した。(2)細菌性バイオフィルムの除去効率の高い機能性糸の開発とデンタルフロスへの応用制作したバイオフィルム擦過除去評価実験システムを用いて、機能性糸の擦過除去効率の評価を実施した。糸には撚り数などの様々な評価パラメータがあり、それを確認して最終的にバイオフィルム除去効率の高い糸の選択を行った。フロスでの応用は、口腔内バイオフィルムを採取して、バイオフィルム擦過除去評価実験システムを用いて糸の実際の歯垢除去効率を検証した。口腔内バイオフィルムの採取には、実験協力者の口腔に整形したハイドロオキシアパタイト片を口腔内設置型バイオフィルム採取装置に設置し、特定部位の口腔清掃を3日間停止して歯垢を蓄積し、歯垢顕示後に写真を撮影し、フロスホルダーにセットした機能性糸で歯垢除去を実施した。再び歯垢顕示後に写真を撮影し、その歯垢除去効率を評価した。同時に使用感や歯肉の傷害性のないことを質問紙調査と口腔内診査にて確認を行った。これらの実験をもって、硬組織の清掃に最適な細菌性バイオフィルム除去用機能性糸の選択ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細菌性バイオフィルムである歯垢の除去効率の評価法の確立において、評価用バイオフィルムの制作では、細菌株の継代から菌液の調整までを含めて数日、バイオフィルムの制作過程に3日間を要するバイオフィルム制作培養系を確立することができ、安定した均質なバイオフィルムを実験に必要な一定量を制作することが可能となった。また、規格化擦過を行った後の基板表面に残ったバイオフィルムの付着の有無、もしくは濃淡を計測した際に発生する付着量評価値の再現性については、生物由来の生菌を使用したバイオフィルムであるので、読み取り値の再現性についての検証が必要であった。これに関しては、評価用バイオフィルム製作法を確立した事もあり、安定した品質の試験バイオフィルム検体ができたことと、再現性を高めるための擦過実験を繰り返した事による実験手法の習熟により実施数をある程度確保する工夫ができ、実験の再現性は良好に安定して改善した。細菌性バイオフィルムの除去効率の高い機能性糸の開発とデンタルフロスへの応用においては、機能性糸のスクリーニングを実施して清掃性の高い機能性糸を選択し、現在使用されている市販のフロスや他の清掃用具との比較実験を実施し、機能性糸が良好な清掃性を持つことが示された。さらに、実際の口腔清掃時を想定して、選択した機能性糸の口腔内清掃時の使用感や歯肉の傷害性のないことを質問紙調査と口腔内診査を実施することにより確認し、細菌性バイオフィルム除去用機能性糸の選択が完了した。これらの成果は、当初の予定である実験をほぼカバーすることができ、研究の平成23年度の達成度はほぼ問題が無いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)細菌性バイオフィルム除去用清拭布の開発と臨床での応用細菌性バイオフィルムの除去は、試験糸の把持部を清拭布用に改造したバイオフィルム擦過除去評価実験システムを使用し、蛍光物質を使用した清拭実験を実施する。さらに、環境に放出しても問題が起きない食品由来の微生物(枯草菌、乳酸菌など)を用いてガラスなどの表面に微生物懸濁液を塗布し、塗布部位の清拭布の削除効果を通常の細菌培養検査やフードスタンプなどを用いて検証する。同時に、現行の清拭に使われる消毒用溶液を用いた清拭やブラシを用いた機械的清掃に関しても評価し、機能性清拭布と消毒用薬剤との併用の効果などを検証する。(2)粘膜清掃用の機能布の評価法の確立と最適な粘膜清掃用具の提案軟組織表面のデブライドメントを含めた粘膜と錯角化上皮の清掃に最適な清掃布の開発を行う。(1)の実験にて選択されたバイオフィルム除去に最適な清掃布を含むいくつかの清掃布を用いて、健康な軟組織の表面を擦過する。同時に軟組織表面の詳細な性状観察、剥離した上皮などの量の評価、擦過時の痛み、擦過部位の擦過後の炎症反応、擦過時の操作性などの指標を擦過した施術者と擦過された対象者について記録する。同時に清掃部位に関して、除去したタンパク質の量や細菌数を算出し、最も為害性が無く操作感が良くさらに清掃性が高い最適な軟組織清掃用の清掃布を選択する。選択した軟組織清掃用の清掃布を用いて、口腔乾燥症の口腔内清掃に関して、痂皮の除去も含めた効果的な応用法を検証する。これらの実験を通して、現行ではブラシ等で行われている口腔内清掃を、より自由度の高い清掃布で行う手法を確立し、それをもって全身の医療に応用可能な、あらゆる生体表面の硬組織・軟組織の完全清掃法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)細菌性バイオフィルム除去用清拭布の開発と臨床での応用細菌性バイオフィルムの除去は、試験糸の把持部を清拭布用に改造したバイオフィルム擦過除去評価実験システムを使用し、蛍光物質を使用した清拭実験を実施する。よって、平成24年度の消耗品は、機能的清拭布の結果の評価の写真撮影用に、シャーカステンを購入して光拡散シートを重ねた撮影装置を設置する。実験環境には負荷はかからないが、機能性糸の実験と比較して機能性布の実験は器機の大きさのが数段大きな物となり、さらに、機能的清拭布の評価に使用する臨床的研究が多くを占め、蛍光ビーズや軟組織診査器材の使用が増加する。同時に、細菌培養装置や付着評価用の器機類の増加も準備が必要である。また、これまでバイオフィルム除去動作に使用したコンピュータ制御ロボットであるXYZテーブルの駆動プログラムは、実験の形態が変わる毎にデータ整理と共にプログラムの制作・修正を行っていた。よって、専門的な技術を要する人員の協力が必要であり、その為の謝金を計上する。(2)粘膜清掃用の機能布の評価法の確立と最適な粘膜清掃用具の提案軟組織表面のデブライドメントを含めた粘膜と錯角化上皮の清掃に最適な清掃布の開発を実施する際は、基礎的な実験は(1)細菌性バイオフィルム除去用清拭布の開発と臨床での応用で確立した器機を応用する、臨床的な実験に関しては、被験者のデータ整理に対して書金を用意する。旅費は大阪にある研究協力者でのKBセーレンとの研究打ち合わせに使用し、研究成果は国際学会で発表する。
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