2011 Fiscal Year Research-status Report
唾液タンパク質と口腔細菌の相互作用:菌体付着と菌体凝集を決定する因子の解明
Project/Area Number |
23659987
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50160940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00304816)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 歯学 / 細菌 / 唾液 |
Research Abstract |
口腔ケアによる口腔バイオフィルムのコントロールは国民の健康増進のための重要なテーマである。口腔バイオフィルムは、唾液タンパク質と口腔細菌との相互作用によって形成される。すなわちエナメル質等の固相に吸着した唾液タンパク質への菌体付着と液相で生じる菌体凝集作用のバランスによって生じる。本研究の目的は、この菌体付着と凝集が生じる条件を調べ、口腔細菌のクリアランスを強く進める条件を明らかにすることである。口腔バイオフィルム形成に重要な役割を果たすStreptococcus mutansを対象菌として用い、その付着、凝集いずれも誘導するヒト唾液タンパク質(gp-340)を精製して検討を行った。 1)まずgp-340の固相への吸着に及ぼす緩衝液のpH、塩濃度の影響を調べた。pH 4~7の各種リン酸緩衝液に溶解したgp-340は、ポリスチレン製マイクロプレートに同程度に吸着することが認められた。またpH 7、NaCl濃度10~1000 mMの各種リン酸緩衝液に溶解したgp-340も同様にマイクロプレートに吸着することが認められた。 2)次にS. mutans菌体のgp-340による凝集誘導に及ぼすpHの影響を調べたところ、pH 6以下の酸性条件では凝集が弱くなり、pH 5では凝集を生じないことが認められた。さらにエナメル質表面へのearly colonizerとして知られるStreptococcus sanguinis、 Streptococcus gordonii等のレンサ球菌を共存させてS. mutansの菌体凝集を調べたところ、同様の結果が得られた。 以上より、gp-340のマイクロプレートへの吸着にはpHや塩濃度は大きな影響を及ぼさないこと、S. mutans菌体のgp-340による凝集は、pH 7~9で生じることが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
S. mutans菌体の固相に吸着したgp-340への付着に及ぼす各種pH及び塩濃度の影響を調べるためにポリスチレンプレートを用いて検討を行ったが、非特異的な付着が生じた。この点を改善するための各種緩衝液の組成調整に時間を要した。また反応系についてもポリスチレンプレートではなく、より口腔環境に近いハイドロキシアパタイトビーズを用いて菌体付着実験を行うための予備的試験にも時間を要し、研究の達成度は当初の予定よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず固相に吸着したgp-340へのS. mutans菌体の付着に及ぼす各種pH、塩濃度の影響をハイドロキシアパタイトビーズを用いて調べる。 次にgp-340のアミノ酸配列をもとに10~20アミノ酸からなる断片ペプチドを作製し、各ペプチドへのS. mutans菌体の付着および各ペプチドの菌体凝集誘導能を評価する。これらの結果からS. mutansの付着、凝集に関与するgp-340の機能領域を決定した後、各機能領域に対する特異抗体を作製する。その後リン酸緩衝液に溶解したgp-340をマイクロプレートに吸着させ、gp-340における各機能領域の顕示状態を、特異抗体を用いて調べる。 さらに各種口腔レンサ球菌、歯周病細菌が共存した状態でS. mutansとgp-340を反応させた後にgp-340をマイクロプレートに吸着させ、各機能領域の顕示状態を調べる。 以上の結果より、gp-340の菌体付着および菌体凝集を誘導する領域およびその発現機序について考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
固相に吸着したgp-340へのS. mutans菌体の付着に関する実験が遅れているため当該実験に要する研究費を次年度に繰り越すことになった。平成24年度は、この繰り越し分と当初請求予定の研究費を、より口腔環境に近い反応系であるハイドロキシアパタイトビーズを用いた菌体付着実験関連費用として使用する。さらに当初の計画を進めるため、次年度の研究費は、試薬、抗体、プラスチック器具、培地、研究成果発表旅費、英語論文校閲費に用いる。
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