2012 Fiscal Year Research-status Report
子どもを産まない世代の身体観を踏まえた「女性の健康支援」に関する研究
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23660072
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
田邊 けい子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (00453506)
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Keywords | 生殖 / 女性 / 身体 / 健康支援 |
Research Abstract |
平成24年度の研究概要は以下の通りである. 1.「生殖」に関する観念と行為の変容という視点から,女性の社会的な地位の在り様があたかも生殖と対立するかのように規定されていることを明らかにした.2.個人の身体観が揺らぎ生殖に関する意識は希薄となり,女性の身体への関心を希薄化させていることを明らかにした.3.女性身体の在り様と保健行動の変化という視点から,女性の身体は身体的な変化だけでなく社会的な存在としての在り様も変化していることを明らかにした. 上記1,2,3から,「生殖から離れている身体」に内在する4つの課題と強みが導かれた.すなわち①自らの身体の「生殖」にかかわる属性の放棄,②個人の人生の問題としてのみに閉ざされる「生殖」,③育まれてこなかった「生殖」を肯定的にみたり,生殖可能な身体として自らの身体をケアする生活態度,④無性あるいは中性的な身体に価値を置く考え方という4つの課題である。一方で,老齢期の健康を自ら担保せねばならないという若年のうちからの健康維持に対する強い動機と欲求とともに,「女性の身体は自然のバランスによって健康が保たれる」とでもいうような生物医学的な枠組みではとらえきれない身体観や健康観が明らかになった.このように,自ら獲得する老齢期の健康という十分な動機に対し,こうした身体観や健康観に基づいた看護支援があれば「生殖から離れている身体」の健康は一定程度担保し得る可能性が導かれた. なお分析過程において調査対象となった女性たちは「生殖をめぐる関心が低かったり,意思決定においては曖昧で流動的,かつ,生殖や身体に関する観念や行為が,本来生殖と密接に結びついている女性の生物学的な身体には基づかない状態にある」ことが明らかとなった.そこで本研究では,このような状態によって生じている現象,及びそうした身体を持っている人々の双方を「生殖から離れている身体」となづけた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度および24年度の研究成果から,本研究を遂行する妥当性が確認でき,最終年度の研究計画に大幅な修正を加える必要性がないと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23および24年度の研究実成果を踏まえ,平成25年度(最終年度)も当初の研究計画にしたがって研究を遂行する. 具体的には,前年度までの研究成果の一部を国立民族学博物館研究プロジェクトで報告し学際的見地からの示唆を得て聞き取り資料の分析を深める。そして性差医学的見解など理論的考察を加えたうえで、本研究の最終目的である「生涯にわたる女性の健康支援」施策に対する提言を看護学の見地からまとめる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23および24年度の研究実績,および当初の研究計画に照らして,研究費は主に研究発表の準備,および分析の深化に必要な調査研究に使用する予定である.
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Research Products
(2 results)