2012 Fiscal Year Research-status Report
光ブロードバンド回線を利用して病院内学級と原籍校を結ぶ学童の復学支援
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23660078
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
高野 政子 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (30316195)
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Keywords | 復学支援 / 病院内学級 / 原籍校 / 小児がん |
Research Abstract |
本研究は、光ブロードバンドネットワーク(回線)を使いTV会議システムを構築し、それにより原籍校と病院内学級を結んで、小児がんなどで地元から離れて長期入院を余儀なくされている子どもたちに対し、特に学童期の病児に重要な社会性の発達や、友達との相互コミュニケーションを促進することが目的である。学童期の子どもの復学を支援するための介入研究である。 平成24年は、5月から介入開始した事例と平成24年10月から介入を開始した事例の2事例の対象児とその保護者と学校関係者にインタビュー調査に協力をいただき研究を進めた。2事例とも、本研究の介入により、復学前の子どもと保護者の不安軽減、病児と原籍校の子どもの関係や学校長や担任教諭との連携がスムーズであり、効果が確認された。また、全国の病院内学級のある病院の小児病棟看護師長を対象として、復学時の学校と病院の連携、支援体制づくりについて、量的研究(質問紙調査)を実施した。 これらの研究結果は、国際学会で『A Study of the Current State of Cooperation between Pediatric ward’s nurse and Hospital Classes and Regular schools』という演題で、44th Congress of the International of Pediatric Oncology(LONDON 10月5-8日、採択後HP掲載済)にて発表した。また、国内学会では「小児病棟看護師と原籍校、病院内学級の連携についての検討-看護師長の評価」を日本小児がん看護学会(国内学会、横浜 11月30-12月2日)で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では1セットの双方向機材を用いて、1人に約6ヶ月の継続的な介入を必要とする。平成23年から2年間で現在までに5事例に対して、このTV会議システムを使用して実施した。平成23年と24年度は、TV会議の必要な機器設置や運営費などの環境面(ハード)の運営と、対象児の体調を優先しながら、学校の都合を調整して初めてTVシステムを接続することが可能となることや、接続と維持費など経費が明らかになった。また、対象児には交流をしたことによる復学時の様子やコミュニケーションなどについてインタビューを実施して評価するという方法で研究を進めている。 対象児童が入院した直後は、家族はわが子の生死の問題に直面しており、復学の問題は意識できない。しかし、現在の小児がんも治療成績が向上しており、1度目の治療の効果が得られると落ち着きを取り戻すことができる。そして3か月も過ぎると退院を目指すことも検討できるようになる。 今回の研究成果として、①全国の病院内学級のある小児病棟では、学童期の病児が復学することを意識した、復学を支援するためのマニュアルなどが整備されていないことが明らかとなった。また、②小児がんや慢性疾患の子どもがいずれは地元の原籍校で、病気とつき合いながら生活をすることを意識して支援が必要である。しかし、子どもの入院から退院のプロセスを見極めて、どの段階で病院と学校とを結ぶかは明確ではない。このような状況を調整するコーディネータが必要だが、医療スタッフか学校関係者かの、誰がその役割を担えるかなどの検討は十分行われていないことが明らかになった。 学童期には理解も進むので、家族の考えや意向とともに子ども気持ちに沿った復学支援を構築することに示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TV会議システムを利用して現在は復学している5事例の子どもとその保護者にインタビューを実施する。そして、復学直後と復学6ヶ月、復学1年、復学2年など経時的変化を明らかにする。今回のインタビューでは、特に対象児の心理的、社会的発達への影響についても、帰納的質的調査を行い、介入の効果を検討する。 また、今年度は研究期間の最終年であるので、論文作成と学会発表を行い、小児がんや慢性疾患の学童の復学支援のあり方を提案するための、復学支援マニュアルような、どこでも共有できる基本的な事項をまとめたマニュアルを作成したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
TV会議システムの中でのiPadなど新たな機種による接続を模索する方向で検討中である。 物品費で30万円、回線使用料および接続料金25万円、国際学会にて20万円、人件費・謝金5万円、調査交通費及び雑費で10万円で計画している。
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Research Products
(2 results)