2011 Fiscal Year Research-status Report
資源の貧困な地域におけるメンタルヘルス支援手法の開発に向けて
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23660091
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岩崎 弥生 千葉大学, 看護学研究科, 教授 (60232667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 平平 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (90436345)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 看護学 / 医療・福祉 / メンタルヘルス / 農村 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、保健医療福祉資源の乏しい中国農村部に生活する女性たちに焦点を当て、女性たちのメンタルヘルスを、女性に内在する個人的資源および女性を取り巻く社会文化的資源との関連から明らかにして、それらを生かしたメンタルヘルス支援を開発し、メンタルヘルス支援開発の方法論を確立することを目指している。 平成23年度の研究目標は、(1)女性の日常の営為の中に潜むライフスキルの視点からメンタルヘルスを検討すること、(2)土着の保健医療資源およびメンタルヘルスに影響する地域の社会文化的要因を特定し、地域のメンタルヘルスケアニーズの簡易アセスメントツールを検討することである。 調査フィールドは、メンタルヘルス資源の乏しい中国S省T市農村部から選定した。調査協力が得られた村共同体は3ヶ所(城鎮化/都市化された1ヶ所を含む)である。 それぞれの村共同体において、参与観察と聞き取りを併用して、女性と女性を取り巻く人々の日常生活とライフスキルについて調査し、質的に分析した。三村の女性に共通したライフスキルは、家事・農業の采配、女性役割への誇り、自助努力、ユーモアなどであった。城鎮化された村の女性に特徴的なライフスキルは「創造的な時間の活用」であった。これは、城鎮化以前に従事していた農作業がなくなり、時間を持て余しがちになった生活の中から生まれてきたスキルと考えられた。 また、村の歴史・地理・経済、村共同体が共有する規則や習慣、伝統、村内に存在するさまざまな共同体の資源(保健医療資源を含む)に関する観察および聞き取りから、メンタルヘルスと関連する社会文化的諸要因を探った。メンタルヘルスの関連要因は、身体的健康問題の有無、労働負荷の程度、経済状況、農業の生産性、家族内サポート、世代内・世代間の交流とサポート、共同体内の信頼・結束などであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究目的は、(1)女性のライフスキルの視点からメンタルヘルスを検討すること、(2)土着の保健医療資源およびメンタルヘルスに影響する地域の社会文化的要因を特定し、地域のメンタルヘルスケアニーズの簡易アセスメントツールを開発することである。 目的(1)については達成しており、目的(2)についても、土着の保健医療資源およびメンタルヘルスに影響する地域の社会文化的要因の特定の部分は達成している。 現在、メンタルヘルスと関連する社会文化的要因を、個人の対処・家族・対人関係・ソーシャルキャピタルの視点から分析を進めており、メンタルヘルス支援の枠組及びメンタルヘルスケアニーズの簡易アセスメントの方法を検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、中国農村部の女性のメンタルヘルスを、女性のライフスキルと女性を取り巻く社会文化的要因との関連から探り、女性のライフスキルと土着の社会文化的資源を生かしたメンタルヘルス支援を開発し、資源の乏しい地域においても実現可能なメンタルヘルス支援の手法について検討することを目指している。 次年度は、(1)メンタルヘルス支援の成否に影響する要因を探り、(2)女性に内在する個人的資源(主にライフスキルに着目)および地域に存在する社会文化的資源(土着のネットワークや保健医療資源など)を生かしたメンタルヘルス支援を開発する。さらに、支援方法の開発の過程の検討を通して、メンタルヘルス支援の開発の方法論(メンタルヘルスケアニーズのアセスメントから支援方法の開発・評価まで)について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定のある研究費は、主として分担研究者に配分した研究費であり、これは平成23年度末に行った現地調査の旅費として請求される予定である。 次年度は、メンタルヘルス支援の成否要因の調査のため、中国国内で先駆的に女性支援に取り組んでいる農村地域を視察する。また、これまでの研究結果をもとに、女性のライフスキルと土着の資源を生かしたメンタルヘルス支援を開発し、研究参加の同意が得られた対象者に対して、現地研究者の協力のもとに予備調査(介入)を実施し、統計的な解析を行う。加えて、これまでの研究成果を国際集会で発表する。 そのため、現地調査のための旅費、研究成果発表のための旅費、データ解析ソフトの購入費用、現地の専門家・研究補助者への謝金、データ処理業務・翻訳業務の一部の外部委託費用、研究協力者への謝礼品を計画している。
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Research Products
(2 results)