2011 Fiscal Year Research-status Report
要介護高齢者に対する補完代替療法として有効な看護介入モデルの開発
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23660101
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
田渕 康子 佐賀大学, 医学部, 准教授 (90382431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
明時 由理子 佐賀大学, 医学部, 助教 (50612074)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 要介護高齢者 / 補完代替療法 / アロマセラピー |
Research Abstract |
【研究目的】施設入所中の要介護高齢者に対するアロママッサージの効果を明らかにする。【方法】介入方法:ラベンダーオイルを用い指先から肘関節のマッサージを左右合計で14分間実施した。評価指標:客観的指標はSCC(Skin Conductance Change)と唾液アミラーゼ活性値、主観的指標はD-QOLとアロママッサージに対する聞き取り調査を行った。【結果】対象者は6名で平均年齢90歳(±8.7歳)、女性5名、男性1名だった。HDS-Rは20点以上2名、11-12点の人が4名だった。SCCの変化:マッサージ開始前に比べて開始後に、緊張を示すNegativeデータ面積が減少しPositiveデータ面積が増え、リラックス状態を示した人が4名、マッサージ開始前に比べて開始後から終了後までPositiveデータ面積に比べてNegativeデータ面積が増えた人、Negativeデータ面積が広い状態を維持した人が各1名だった。唾液アミラーゼ活性値の変化:マッサージ開始前に比べて終了後に唾液アミラーゼ活性値が減少し、リラックス状態を示した人は3名、変化がなかった人とわずかに上昇した人が各1名だった。D-QOLの変化:D-QOL総点及び「自尊感情」「肯定的情動」「否定的情動」「所属感」「美的感覚」の下位概念の得点変化をWilcoxon検定で比較した。マッサージ実施前と比較し実施後のD-QOL総点が有意に改善していた (p=0.046)。下位尺度では、実施後の美的感覚の値が有意に改善していた(p=0.027)。聞き取り調査:気持ちいい、気分が落ち着いた、今後も続けたいと対象者全員が答えた。アロマオイルの香りを感じなかった人が2名いたが、香りを不快に感じた人はいなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度当初の計画では、芳香浴の介入効果の検証を行う予定であったが、計画を変更し平成24年度に実施する予定であった、アロマオイルを付加したハンドマッサージの介入効果の検証に取り組んだ。用いたアロマオイルは、優れた鎮静効果やリラックス効果、安眠効果などが期待される、ラベンダーオイルである。 6名の施設入所中の要介護高齢者を対象に介入した結果、QOL評価や、聞き取り調査の結果など、主観的評価においてはD-QOL総点が改善し、聞き取り調査の結果においても6名全員から好評価を得、補完代替療法としてのアロマオイルを付加したハンドマッサージの介入効果を確認でき、目標達成に近い成果が得られた。 しかし、客観的評価と主観的評価が一致した事例が半数はあったが、客観的評価と主観的評価が一致しない事例がみられたことから、客観的評価においては、目標達成が十分であったとは言えない。特に、唾液アミラーゼ活性値の測定においては、介入前には測定可能であったが介入後に測定不能であった症例が1例あり、加齢による唾液分泌機能の低下が影響した可能性が考えられた。そのような結果を踏まえ、症例数が少なく、本調査の結果は予備調査としての位置づけになったことが研究の達成度に影響したと考える。 さらに、本調査としての研究の実施を予定した時期に、研究責任者が体調不良および入院加療のため長期の病気休暇を余儀なくされ、十分な研究期間を確保できなかったことも、目標達成に至らなかった原因の一つであった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 芳香浴の実施と効果の検証日中の9:30~11:30の2時間、活気復活効果があると言われる柚子を用いた芳香浴、さらに、夜間帯は20時~4時の8時間鎮静・入眠作用があるといわれる白檀を用いた芳香浴を、拡散器(デュフーザー)を用いて、連続4週間実施する。客観的評価には、アクチグラフ(米国A.M.I社製)を用い、睡眠覚醒リズムの測定を、介入前に連続3日間、介入期間中は4週間の期間中に定期的に連続3日間の測定を行う。主観的評価には、対象者の認知機能に応じて、認知症高齢者の主観的QOL評価(DQOL:Dementia Quality of Life Instrument)または、気分プロフィール検査(POMS:Profile of Mood States)を用い、介入開始前、介入終了最終日に聞き取り調査を行う。2. 蒸しタオル温浴の実施と効果の検証 対象者の好みのアロマオイルを用いた蒸しタオル温浴を1回/週、連続4週間実施する。対照群には、香りを付加しない蒸しタオル温浴を同様の方法で1回/週、連続4週間実施する。客観的評価には、蒸しタオル温浴の実施前と実施直後に唾液アミラーゼ活性値の測定を行う。主観的評価には、対象者の認知機能に応じて、認知症高齢者の主観的QOL評価(DQOL:Dementia Quality of Life Instrument)または、気分プロフィール検査(POMS:Profile of Mood States)を用い、4週間の介入開始前と介入終了後に聞き取り調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 調査に関連する研究費使用計画1) 生理学的指標に用いる測定機器および関連消耗品:ストレスホルモンの評価が可能といわれる唾液アミラーゼ測定器(ニプロ社製)ならびに測定チップの購入、睡眠状態の評価として、睡眠覚醒リズムの測定が可能なアクティグラフ(米国A.M.I社製)、データ解析専用ノートパソコンの購入等に合計50万円使用することを計画している。2) 調査の実施およびデータ解析、データ入力作業等の研究補助のための人件費:要介護施設での調査の実施、測定データの解析、データ入力などに2名の研究補助員を雇用しているため、人件費として約80万円の経費を予定している。3) データ解析ソフトならびにその他の消耗品:調査結果の分析には統計ソフトを用い、介入の有効性を科学的に検討することを予定している。その際に用いる統計ソフトSPSS(バージョンアップ版)(IBM社製)の購入、芳香浴に用いるディフーザーや各種アロマオイルなどアロマセラピーの実施に必要な消耗品、その他データ保存のためのUSBフラッシュメモリやCDなどの消耗品の購入に必要な経費として、50万円を予定している。2. 成果発表に関する研究費使用計画研究成果を2013年2月に開催される16th East Forum of Nursing Scholars(EAFONS)にて発表する予定であり、発表に関する経費(学会参加費、旅費、ポスター作製経費等)として20万円を予定している。
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