2011 Fiscal Year Research-status Report
森林環境を利用したうつ病者への認知療法のモデルの提案
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23660111
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
大賀 淳子 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (80305846)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 森林環境 / うつ病 / 認知療法 |
Research Abstract |
大分県内の精神科デイケア2施設(A、B病院)の協力を得て、以下のことを行った。 A病院デイケアメンバーに対して、森林環境における認知療法的プログラムを2回実施した。1回目(紅葉シーズン;11月)の参加者は9名(男6名、女3名)(平均年齢43.8歳)、2回目(梅花シーズン;3月)は7名(男5名、女2名)(平均年齢49.9歳)であった。有する疾患は、うつ病の回復期あるいは統合失調症の慢性期であった。効果評価のための測定は、病院で行うプログラム開始前後および森林環境でのプログラム開始前後に実施し、測定項目は血圧、唾液アミラーゼ(ニプロ酵素分析装置アミラーゼモニタによる)、POMS(Profile of Mood States)、自立神経バランス(イナーバランススキャナによる)および内服薬換算値で、ほかに森林環境でのプログラム終了後に無記名で感想を求めた。収縮期血圧(平均値)は、病院で行うプログラム後に上昇していたのに対し、森林環境でのプログラム後は、2回とも有意な下降が見られた。ストレス指標となる唾液アミラーゼ値は、個人により変化の様子が大きく異なっていた。POMSによる気分の様子は、森林環境では病院でのプログラムより有意に「疲労」が減少していた。 B病院の集団精神療法プログラムに参加するうつ病入院患者3名(いずれも男性、平均年齢42.7歳)に対して、森林環境における認知療法プログラムを1回実施した(紅葉シーズン;11月)。測定は、ベースライン時、森林環境でのプログラム時および退院時の3回で、項目はBDI-II、自律神経バランス、内服薬換算値、血圧および唾液アミラーゼで、ほかに森林環境でのプログラム終了時に無記名で感想を求めた。現在、退院時データも含めて測定結果を分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象施設との事前打ち合わせに3カ月余りの期間を要したため、ベースライン調査に着手できたのが10月で、当初の計画より3カ月も遅れてしまったことが原因である。そのため、23年度に実施できた森林環境での認知療法的プログラムの回数は、A病院2回、B病院1回にとどまってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の病院スタッフとの数回にわたる打ち合わせをとおして、「ケアスタッフが、うつ病患者を通常の生活範囲を超えた距離にある森林環境に連れだすことに安心して同意するには、数々のハードルがあること」を実感した。しかし、ケアスタッフが理解を示し、実際に森林環境でのプログラムを経験し、参加者の満足した様子を確認できれば、次回の実施を期待してくれることが判ったので、2年目は順調に進めることが可能であると考えている。 現在、A・B病院スタッフとの間で、今年度スケジュールを調整中である。ただし、当初予定していた2か月に1回のペースは対象者にとって負担が大きいため、3~4カ月に1回のペースに変更する予定である。さらに参加者の状況にあわせて適切な時期に効果評価のための調査を実施し、その結果をもとに参加者全員の意見を集約して、「森林環境を利用したうつ病者への認知療法のモデル」を検討し、提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
森林環境における認知療法プログラムの実施回数が当初の予定よりも少なかったことに加え、23年3月に使用した研究費が24年度に入って処理されたため、次年度使用額が発生した。24年度に請求する研究費は、当初の計画通りである。
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