2011 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者のセルフスティグマとカミングアウトの心理学的関連モデルの構築
Project/Area Number |
23660116
|
Research Institution | Toyohashi Sozo University |
Principal Investigator |
永井 邦芳 豊橋創造大学, 保健医療学部, 講師 (70402625)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 精神障がい者 / 地域生活 / セルフスティグマ / 自己開示(カミングアウト) / エンパワメント / 自己効力感 |
Research Abstract |
今年度は本研究の最終的な目標である「精神障がいを持つ人のセルフスティグマとカミングアウトの心理学的関連モデルの構築」に向け、最終的な検証に必要な測定項目である精神障がい者のセルフスティグマを測定する尺度を作成し、研究の前提条件である精神障がい者のセルフスティグマが諸外国同様に自尊感情や自己効力感に負の影響についての検証を行った。まず欧米で使用されているセルフスティグマを測定する尺度の日本版を作成し、デイケア、作業所、クリニックにて精神疾患を持つ20歳以上の者を対象に調査票による尺度の信頼性妥当性を検証するための調査を行なった。調査表は日本版精神疾患を持つ人のセルフスティグマ尺度の他に自己効力感尺度(GSES)、自尊感情尺度(Rosenberg Self-Esteem Scale)、抑うつ尺度(CES-D)を含めた。分析は内的整合性、再テスト信頼性、構成概念妥当性、基準関連妥当性を検討した。138名から回答を得た結果、信頼性については、Cronbach α係数及び再テスト法において満足ゆく結果が得られた。しかし項目分析で尺度全体で3項目(Self-concurrenceで1項目、Self-esteem decrementで2項目)についてフロア効果が認められたため、項目の検討について一考の余地があることが示唆された。構成概念妥当性について下位尺度間の相関は、Stereotype awarenessと他の下位尺度との相関が認められた点で原版との相違が認められたものの、他の尺度間の相関は同様の結果が得られた。基準関連妥当性についてはセルフスティグマ尺度全体で自尊感情との間で-.42、自己効力感の間で-.41の有意な相関が認められた。構成概念について検討の余地が残されるものの、全体的には信頼性妥当性について確保されたと考える。今後は本尺度を活用し研究を継続する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の計画はおよそ順調に達成できていると考えている。平成24年度の実施計画については調査おける質問項目の最終調整に行っている段階である。計画当初は、年度初めに研究計画書の完成をもって倫理委員会にて承認を得て調査を開始する予定であったが、そこまでには進んでいない。これは、セルフスティグマを測定するための平成23年度の調査の結果、検討を要する質問項目が認められたことと、当初の予定よりも研究協力者を確保することが困難であったため、これらへの対処を考慮した計画の修正が必要となったためである。しかし当初の予定より若干遅れているものの、修正のきく範囲内であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的である精神障がい者のカミングアウト(自らの意思で自分が精神障害をもって生活していることを開示すること)がセルスティグマとどのような関連(影響も含め)があるのかという点に関する心理学的モデルの構築に向けて測定項目の準備を整えることができたため、先に実施した面接調査で確認できたカミングアウトに肯定的な影響与える要因(ピアサポート、専門職のサポート、疾病の理解度)を再検討し、調査項目を確定し、調査用紙の作成および研究計画を整え、調査に臨みたいと考えている。今年度中にデータを収集しまとめ、最終年度には結果を学会および論文等の形にして公表していく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としては、データ保護の観点から本研究実施中は本研究に使用することとデータ入力者(研究者本人あるいはアルバイト)以外アクセスしないパソコンとそれに付随するオフィスと統計分析ソフトを購入する。その他レーザープリンター、英文翻訳、プレゼンテーションソフトを購入する予定。旅費は学会への参加のための旅費および参加費等に使用する予定。人件費および謝金はデータ入力の補助アルバイト雇いあげのための人件費、謝金は、アンケート調査に協力いただいた方への粗品(一人150円程度の文房具)を予定している。その他としてアンケート用紙、封筒の印刷にかかる費用と返信用の郵便費、論文の校閲として予算を計上している。
|