2012 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者のセルフスティグマとカミングアウトの心理学的関連モデルの構築
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23660116
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Research Institution | Toyohashi Sozo University |
Principal Investigator |
永井 邦芳 豊橋創造大学, 保健医療学部, 准教授 (70402625)
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Keywords | 精神障がい者 / スティグマ / 自尊感情 / エンパワメント / ソーシャルサポート / ストレス対処 |
Research Abstract |
本研究は精神障害者の障害開示(カミングアウト)意思決定のプロセスにおいてスティグマがどのような影響を与えるのか、また障害開示(カミングアウト)はセルフスティグマを低減あるいは緩衝することができるのかという点について研究考察し、さらにはセルフスティグマに影響する因子の構造モデルを構築することを目標としている。 本年度は、先に実施した精神障がい当事者の方へのインタビュー内容の再検討を行った。その結果、自分が精神障がい者であることについて、障害開示(カミングアウト)することを意識する段階において、普段は意識していない精神障がい者としての自分との直面化すること。精神障がい者であることを開示するのは、サポートへの期待や将来への希望であるが、と同時に偏見差別の対象となることへの不安(予期不安)が生じるため、開示について戸惑いや葛藤を生じる。これらの葛藤は心理的ストレスとなるが、このような、状況においても、専門職者、同じ疾患をもつ仲間、家族などのサポートによって、困難を自分自身の力でコントロールする自信(ストレス対処能力)を高めることができること。さらには、それがエンパワメントを高め、スティグマを低減させることができる可能性が考えられた。 最終年である本年は、これらの結果をもとに、精神障がい者支援施設に通所しながら、地域生活を送っている当事者に対して質問紙による調査を実施する予定である。これによって、上記に述べた内容から導き出したソーシャルサポートがストレス対処能力を高め、障害開示(カミングアウト)意思を促進し、エンパワメントを高めるとともにセルフスティグマを低減する研究仮説モデルを量的研究によって検証していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は精神障がいを持ちながら地域生活を送っている者を対象としており、また研究内容も当事者自身が持つ偏見、差別への意識に関連するものであることから、質問紙調査において研究協力者への配慮を入念に行う必要があり、調査質問項目の最終的な決定に想定以上の時間を費やした。 また研究協力の依頼においても対象者が通所する施設への研究協力を得るために時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施する質問紙による調査については、5月より開始し、8月末までに調査を終える予定。最終的には150以上のサンプル数を確保したいと考えている。 サンプル数がそろった段階で統計的手法を用いて分析を行い、結果をまとめる。 まとめた結果は学会発表を行い。その後論文にまとめる。学会発表は年度内に済ませ 同時進行的に論文形式で学会誌に投稿したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの到達度」に記したように、当初の予定では24年度は、質問紙による調査を実施するはずであったが、質問紙で調査する項目の検討に時間を要したこと、および調査依頼機関の再調整等の諸理由によって、予定が遅れてしまったため、この調査に伴う予定されていた支出がなくなった。 本年度前半には、調査を終えるよう進めており前年度より繰り越した助成金は、調査紙の作成、郵送費等昨年度に予定していたものに充填する。その後、残りの助成金は、当初より予定していた、2年目に行った予備調査としての日本語版セルフスティグマ尺度の信頼性妥当性の検証については、現在学術誌に投稿する準備を進めている。その他データ入力作業にかかる人件費、研究結果の公表にあたり、本年度後半には結果をまとめ学科発表を行う予定であり、そのための研究旅費。翻訳ソフトの購入。研究論文作成における英文校正費が主な支出予定。
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