2012 Fiscal Year Research-status Report
自殺予防のアウトリーチに関する研究―街角メンタルヘルス―
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23660117
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Research Institution | The Japanese Red Cross Toyota College of Nursing |
Principal Investigator |
長江 美代子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 教授 (40418869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 希恵 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 研究員 (00310623)
岩瀬 貴子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 講師 (80405539)
古澤 亜矢子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 講師 (20341977)
石黒 千映子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 講師 (80315895)
田中 敦子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 研究員 (70398527)
坪ノ内 千鶴 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 助手 (90449497)
佐藤 仁和子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 助教 (00639544)
安藤 智子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 助手 (90583055)
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Keywords | 自殺予防 / アウトリーチ / メンタルヘルス |
Research Abstract |
【質問調査票の集計と分析】研究参加者:2012.2~2013.3までに受付30名うち26名について集計し分析した。女性25名男性1名:平均年齢55歳(範囲20~63);コンタクトは電話(13),メール(10),スタッフに直接(3);繋ぎ先カウンセリング(13)クリニック(9),元々の受診先(4),その他支援機関(5);街角での繋ぎのための面接回数1回(14),2回(9),3回(1),キャンセル(2)。電話の受付対応と面接員の面談について全員がとても満足からやや満足と答えた(早い対応、話しやすい、じっくり聞いてもらえた、こころが軽くなった、整理できたなど)。 相談内容の特徴:精神身体的疾患が背景(13):親への病気の告知について,妻の妄想,職場の人間関係(盗難の噂をされている),悩みを相談したい。付きまとわれている,彼や両親に攻撃的になるため周囲に心療内科に行くよう勧められた。;DVや虐待などの家庭内暴力が背景(9):26歳の息子の事(ひきこもり、暴力),母親が父親からDVを受けている,(娘)DVを受け入れない娘のメンタル,夫の精神的DV ,病気や夫婦関係など慢性的悩み,DV夫と別居し働き始めたら続けられなくなった,子どもにイライラ「あててしまう,DVで一歳半の娘を連れて実家へ逃げてきた,職場のハラスメント,性同一性障害,暴れる甥のこと、財産を取られる; 人生のたてなおし(6):長年心に蓋をしてきた気持ちのわだかまりを全部出したい, いろいろゴタゴタを抱えてどうしてよいか分からない,自分を立てなおしたい,いろいろ抱えているが、これからの自分の人生に折り合いをつけたい,自分の人生を生きなおしたい,人とのつながりがほしいけどこわい。何でも話せる友人がほしい。 心理・社会・経済的な複数の問題がからみあっている。ケース検討の総合的な分析より、具体的な支援の課題とニーズが浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【支援の課題とニーズ -ケース検討の総合的な分析より-】いずれも心理・社会・経済的な複数の問題がからみあっている。DVや虐待は全体の背景にあり、最終的には根本にある処理されない自身と親との関係が浮かびあがってきた。 1)複合の問題に対しては、段階的、多面的支援が必要、就労支援の前に“こころのケア”への配慮が必要、経済的支援が重要, 2)子どもにあらわれる問題で「おわらない」過去にならないDV, 3)複雑性PTSDの理解が不可欠(自ら支援につながることができない状況に対して「申請」を前提とした行政の支援の在り方への疑問)。 【ネットワーク】基礎的なネットワークができ、スタートした後はつなぎ先からアンケートでフィードバックをもらい、街角クライエントのニーズに合わせて資源を開拓し、リストに追加してきた。健康医療福祉機関に出向き、直接話をすることで、理解を得た機関とのネットワークをつくったことで、小規模ではあるが有効な繋ぎにつながった。また、ネットワーク機関から5名の面接員によるアセスメントの質の高さを評価されたことが、ネットワークの広がりにつながった。迷ったケースについては、Skypeなどを活用してインターネットミーティングを実施し、面接員同士でサポートしあったことも質の保障につながったと考えられる。面接前にキャンセルとなった2名以外は、その後のフォローアップ(1,3,6,12か月)でその繋がりの継続を確認できている。反省としては、つなぎのため時間をかけて面接をするため、利用者にとって「カウンセリング」の期待を持たせてしまったこともあったことである。ミーティングを持ち、説明内容や、面接時の対応について適宜打ち合わせ一貫性あるものにする必要がある。地域の支援団体より、「街角メンタルヘルス」の活動について説明してほしいという依頼もあり、地域での連携が広がる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
医療への繋ぎはなんとかできても、適切な治療、とくにPTSDについては治療の場が限られており、今後の深刻な課題である。利用者の背景には暴力被害者が多く、多職種によるトラウマケアチームの立ち上げの必要性を強く感じた。精神科医、神経内科医との連携体制、他職種連携を発展させる必要がある。ネットワークに関しては地域のNPOなどの民間支援団体が協力的であるが、行政や公的機関は今一つ利用者のニーズに届かない。行き場のない利用者が街角に来ているといった印象もある。 今後については、H25年度からの基盤B「暴力被害者に対する被害直後からの継続したケアに関する研究」につなげていき、暴力被害による複雑で慢性的な健康問題をかかえる個人と家族にアウトリーチするとともに、医療福祉の現場において暴力被害に対して適切に予防し介入するための支援体制を構築すること、およびその効果を実証的に評価することである。自殺の予防と早期介入の繋ぎを主な活動とする健康医療福祉ネットワーク「街角メンタルヘルス」を発展させて、①問題を整理し医療福祉機関へ繋ぐ、②繋ぎ先医療福祉機関と連携し継続したケアの提供する、さらに③関連機関と連携し暴力被害者への適切な急性期対応を支援する「ナースの街角健康アウトリーチ」として活動を展開し、研究・教育・実践活動の一環として利用者の声を聞きながら実施・評価・修正し体制を構築していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特定されたニーズに基づきメンタルヘルス支援ネットワークシステムを構築を構築し、アウトカムと評価方法を検討し決定する。 ・「街角メンタルヘルス」の活動を継続し、定期(1回/月)の経過報告とケース検討会議の他にも適宜討論の場を持ち、活動を評価・修正しながら整えていく。 ・国内開催の学会で成果発表する ・学会誌に投稿する。
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