2012 Fiscal Year Annual Research Report
体組織液・爪・毛髪由来の生化学物質による心的ストレス評価
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23680023
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
野村 収作 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (80362911)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ストレス / 感性生理学 / 感性情報学 / 実験系心理学 / 精神神経内分泌学 / 精神神経免疫学 |
Research Abstract |
本研究の目的は唾液・体組織液・爪・毛髪などに含まれるホルモン等により、長期にわたる心的ストレスを評価する方法論を開発することにある。人間がストレスに曝されると体内に特定のホルモン・免疫物資等の過剰分泌が生じることが知られている。研究代表者はこれまで、唾液中に分泌されるホルモン等によるストレスの評価研究を行ってきた。本研究はこれを発展させ、体組織液・爪・毛髪などの検体による、より汎用的なストレスの客観的評価手法を研究する。本研究は研究期間全体を通じて(1)体組織液・爪・毛髪からのバイオマーカー抽出技術の確立、(2)実験研究による各バイオマーカーの有効性・適用可能範囲の評価、(3)フィールド調査研究によるフィージビリティ・スタディ、の各段階により研究を遂行する計画である。 昨年度、既に標記実施内容(1)は達成された。これを踏まえ、本年度(2年目)は(2)に着手し、毛髪や爪検体中のストレス関連ホルモンに関する、測定技術の信頼性、定量の再現性、性差・個人差の範囲などを検証し、結果的にその有効性を確認できた。とりわけ、体組織液中のコルチゾール定量技術に関しては、短期的なストレス反応(急性ストレス反応)および長期的なストレス反応(起床時コルチゾール反応)夫々の目的に対して科学的にその有効性を実証した。さらに、次年度以降に予定されていたフィールド調査研究について、その一部を前倒して実施しサンプルを収集した。 これらの成果は、学術論文・学会発表により公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度(2年目)の研究では、昨年度に確立した体組織液・爪・毛髪からのストレス関連ホルモンの定量プロトコルに基づき、その有効性・適用可能範囲の評価試験を実施した。その結果、ストレス関連ホルモンとして特に重要なコルチゾールについては、十分な有効性があることが示された。例えば、毛髪におけるコルチゾールの残存量変化を評価した結果、約半年前に生成された毛髪部位においても、十分にコルチゾールが定量可能であること、つまりは半年前のストレス状態を遡って評価できる可能性を示した。また、毛髪中の性ホルモンに関しては男女の差異が体内と同様に認められることを示した。とりわけ、体組織液中のコルチゾールにおいては、急性ストレス反応においても有意に高い相関が認められ、同手法の有効性が実証された。 さらに、次年度以降に予定されていたフィールド調査研究について、その一部を前倒して実施しサンプルを収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた結果に基づき、本年度はフィールド調査研究を実施する。具体的には、毛髪・爪・体組織液の各検体から抽出されたストレス関連ホルモンと、検体を提供した被験者の心理的状態や生活習慣との関係性をフィールド調査として実施する。特に、学生を対象とした短期企業研修や卒業研究などの強い社会心理的なストレッサーに対する各ホルモンの経時的な変化について、プロスペクティブ(前向き)研究を行う(これはサンプル採集と解析・評価を2年間にわたり実施する)。
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