2011 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケール脳神経モデルを用いた脳波・近赤外光計測信号からの脳内動態の解読
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23680024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小谷 潔 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (00372409)
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Keywords | 視床-皮質モデル / 脳波 / ニューロン |
Research Abstract |
本研究では,脳のマルチスケール数理モデルを構築し,その理論的な解析手法を発展させることを目的としている.それによって,非侵襲的に取得した脳波・NIRS(近赤外光トポグラフィ)信号計測から脳内動態を読み解く技術を開発する.今年度においては,脳波における低周波のリズム生成機構を数理的に明らかにするため,視床-皮質モデルの構築およびその解析解の導出を行い,さらに実験で得られた脳波信号からモデルパラメータを推定する手法の提案を行った. 視床-皮質モデルは時間遅れを含む微分方程式系で記述されるため,解析的な取り扱いが困難であるが,視床-皮質モデルが生み出すマクロなリズム現象に対して,中心多様体縮約および位相縮約を行った.その結果,視床-皮質モデルが分岐点の近傍で複素ギンツブルグ-ランダウ方程式の形で表わすことができること,およびリミットサイクル解においては位相方程式の形で表わすことができることを示した.さらに,これらの縮約方程式を用いて集団リズムの形成を理論的に導出し,得られた解析解が視床-皮質モデルにおいて妥当であることをシミュレーションによって確認した. 次に,実験から得られた脳波信号についてモデルのパラメータを推定する手法の提案を行った.はじめにシミュレーションによって生成した疑似的な脳波信号に対して手法を適応し,正しくパラメータが推定できることを確かめた.その後,本手法を実際の脳波信号に適用し,脳内の状態識別に対する有効性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳のダイナミクスを記述する数理モデルに対して,新しい解析手法を提案し,妥当性を示した.今回提案した手法は数理的に高度かつ有用性が高いため,順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後についても研究計画の通り推進していく予定である.
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