2012 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケール脳神経モデルを用いた脳波・近赤外光計測信号からの脳内動態の解読
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23680024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小谷 潔 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (00372409)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脳波 / ニューロン |
Research Abstract |
神経細胞の持つ集団リズムは脳内情報処理に重要な役割を果たしているが,神経細胞間の相互作用がどのようにマクロな集団リズムを形成しているかについては不明な点が多かった.本研究では,脳のマルチスケール数理モデルを構築し,その理論的な解析手法を発展させることを目的としている.それによって,非侵襲的に取得した脳波・NIRS(Near Infra-Red Spectroscopy: 近赤外光トポグラフィ)信号計測から脳内動態を読み解く技術を開発する.今年度においては,脳のマルチスケール性に着目し,個々のニューロン活動と集団ダイナミクスの関係を数理的に関連付ける理論の構築を行った.それにより,神経細胞を記述する微分方程式の多体系に対して,適切な変数変換を導入することで解析的な見通しのよい数理モデルを得ることに成功した. 理論の妥当性を数理的に検証した後に,構築した理論を用いて神経細胞の集団挙動を予見できることを示した.神経細胞の集団振動現象(30-80Hzのガンマ波の周波数帯での振動現象)が現れる条件を理論解析によって特定し,神経細胞集団モデルの数値計算によって理論が正しいことを検証した.さらに,神経細胞数理モデルのミクロな特性変化がマクロな集団リズムに与える影響を解析的に求める解析理論を構築し,数値計算によって理論が妥当であることを示した. 今年度構築した理論は神経細胞それぞれが確率的に振る舞いながらも集団でリズムを形成する際に適用できるため,脳活動の複雑なダイナミクスをマルチスケールで捉える目的に役立つことが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳のダイナミクスを記述する数理モデルに対して,新しい解析手法を提案し,妥当性を示した.今回提案した手法は数理的に高度かつ有用性が高いため,順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後についても研究計画の通り推進していく予定である.
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