2011 Fiscal Year Annual Research Report
報酬・忌避行動と意志決定における大脳基底核神経回路の制御機構
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23680034
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
疋田 貴俊 (財)大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (70421378)
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Keywords | 大脳基底核 / 薬物依存症 / 黒質網様部 / Eph受容体 / コカイン |
Research Abstract |
大脳基底核は運動機能、報酬・忌避行動、意志決定を司り、その障害はパーキンソン病や薬物依存症などの精神神経疾患につながる。大脳基底核神経回路は主に直接路と間接路に二分され、共に黒質網様部に入力するが、その統合された情報の処理に関わる分子メカニズムは明らかにされていない。そこで、直接路と間接路のそれぞれに特異的な可逆的神経伝達阻止法を用いて、黒質網様部における神経回路特異的な情報処理機構を解析した。直接路遮断と間接路遮断は共にコカイン急性投与による行動量上昇を抑制するが、コカイン連日投与による行動量増加は直接路遮断でのみ抑制され、間接路遮断では野生型マウスと同様に観察される。そこで、直接路遮断あるいは間接路遮断を行ったマウスにコカインを急性あるいは慢性投与し、黒質網様部での遺伝子発現の変化を解析したところ、コカインを投与した直接路遮断マウスでのみ黒質網様部でのephrinA5,EphA4,EphA5遺伝子の発現上昇がみられた。これらの分子は黒質網様部のGABA作動性抑制性神経細胞に共存しており、イムノアドヘジンによるこれらの分子の活性化はコカイン連日投与による行動量増加を抑制した。さらに直接路遮断時にのみコカイン投与によるephrinA5下流シグナルの増強(黒質網様部でのリン酸化Erk1/2陽性細胞の増加)がみられた。以上の結果から黒質網様部のephrinA5-EphA4/EphA5シグナルが直接路依存的にコカインによる行動変化に関与していることを示した。報酬行動、薬物依存症における分子機構の一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大脳基底核神経回路における情報伝達の統合と処理の分子機構の一端を明らかに出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
可逆的神経伝達阻止法と薬理学的手法を組み合わせて、報酬・忌避行動と意志決定における大脳基底核神経回路制御の分子機構を調べる。
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Research Products
(13 results)