2012 Fiscal Year Annual Research Report
マウス嗅覚系における神経回路の発生・再生ダイナミクス
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23680038
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今井 猛 独立行政法人理化学研究所, 感覚神経回路形成研究チーム, チームリーダー (70509851)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | シナプス除去 / 樹状突起 / 僧帽細胞 |
Research Abstract |
嗅球の糸球体において、嗅神経細胞軸索から入力された匂い情報は2次神経細胞である僧帽・房飾細胞へと受け渡される。僧帽・房飾細胞は唯一の主樹状突起を単一の糸球体へと伸ばして興奮性入力を受け取ると共に、複数の側方樹状突起を伸ばして顆粒細胞から抑制性入力を受ける。このような樹状突起の形態形成は生後数日の間に確立される。我々は僧帽細胞をまばらに蛍光タンパク質で標識することにより、樹状突起の発達過程を記述した。その結果、生後2日目までは僧帽細胞の複数の樹状突起が複数の糸球体に伸びているが、生後3-4日目に樹状突起の刈り込みが起こり、生後6日目までにほとんどの僧帽細胞が単一の主樹状突起を有するようになることが判明した。このような刈り込みプロセスは、嗅球において匂い情報の”混線”を防ぐ上で極めて重要である。 これまでに、匂いを受容できないCNGA2ノックアウトマウスの解析から、この刈り込みプロセスには匂い受容は必要ないことが示されていた。そのため、どのようなメカニズムで樹状突起の刈り込みが起こるのかは不明であった。我々は匂い刺激によらない、自発的な神経活動が樹状突起の刈り込みに関与している可能性を考え、内向き整流性K+チャネルKir2.1を過剰発現させ、神経活動を抑えたときの発達プロセスについて調べた。この結果、神経活動阻害をすることで僧帽細胞主樹状突起の刈り込みが阻害されること、側方樹状突起の伸長が阻害されることが明らかになった。更に、CREB等を介した遺伝子発現がこれらのプロセスに関与している事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では発生期の樹状突起形態形成の分子機構の解明は容易ではないと考え、とりあえずは成獣における樹状突起の可塑性の可能性に着目して研究を始めたが、胎児期の僧帽細胞を遺伝学的に操作することが出来るようになり、発生期の研究が飛躍的に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに僧帽細胞樹状突起形態形成における神経活動の重要性が明らかになってきたが、その神経活動の実体は依然として不明である。次年度はこの神経活動がどのような物であるのかについて更に研究を進める。具体的には、自発的な神経活動のカルシウムイメージングを行い、その様式を明らかにする。また、遺伝学的な解析をすすめ、どのようなイオンチャンネルが関与しているのか同定する。我々の予備的な結果として興奮性GABAの関与が疑われることから、興奮性GABAの活動を抑えたり、GABAの産生そのものを操作することによってどのような影響が出るのかについて調べる。 次に、これまでの我々の研究から、CREBを介した転写制御が樹状突起の形態形成に重要であることが明らかになっているため、神経活動によって転写制御されている遺伝子群の同定を試みる。具体的には我々が以前に確立した一細胞マイクロアレイ法を用いて、神経活動を抑えたときに発現量の変化する遺伝子を同定する。同定された候補遺伝子の中から、実際に神経活動依存的な樹状突起形態変化に関与する遺伝子をRNAi法や神経活動阻害のレスキュー実験によって同定する。
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Research Products
(7 results)