2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23680060
|
Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
坂口 顕 兵庫医療大学, 医療福祉学部, 講師 (80454792)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 微弱電流刺激 / 組織損傷 / 物理療法 / 理学療法 / 創傷治癒 / スポーツ |
Research Abstract |
本研究は,動物を用いた基礎実験と臨床における研究から成り立っている. 平成24年度,術創の硬さに着目し,基礎実験を行った.ラット背部に切開創を作成,その後縫合した術創モデルを用いて,その術創部に対して微弱電流刺激を行った.時間経過とともに,コントロール群に比べ,微弱電流刺激群では,術創部の硬度が減少することを確認し,微弱電流刺激が術創部に対して何らかの影響を与えることを第47回日本理学療法学術大会(神戸)にて報告した. 次に,臨床現場において,術創部の硬さが問題になることの多い足関節周囲の手術後の患者に対する,微弱電流刺激の効果検証を行った.微弱電流刺激を行わない対照群に対して,微弱電流刺激群では,術後の腫脹の減少が確認され,足関節背屈の関節可動域制限を抑制することを確認した.これについても同学会にて報告した. 続いて,従来報告されている単相性微弱電流刺激と二相性微弱電流刺激を比較するために,皮膚全層欠損モデルラットを用いて,組織修復に対する効果検証を行った.単相生微弱電流刺激に比べ,二相性微弱電流刺激の方が,組織修復効果があることを確認した.この結果は平成25年5月に開催される第48回日本理学療法学術大会(名古屋)にて報告する予定である. さらに,スポーツ現場で頻繁に生じる,肉離れや筋挫傷を想定し,筋損傷モデルラットを用いた微弱電流刺激の効果について検証するために,モデル動物の作成実験を行い,モデル作成に至っている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,「微弱電流刺激のエビデンスを創造する」であり,現在スポーツ現場や理学療法場面で用いられている微弱電流刺激の作用機序を確認するとともに,臨床現場での応用場面に関するエビデンスを確立するということが目的である. 基礎研究では,「術創部に対する影響」「単相性と二相性の比較」という,従来の疑問を解決する糸口を発見することができた.またさらにスポーツ現場で頻繁にみられる筋挫傷に対する効果検証を行うために,筋挫傷モデルの作成段階まで終了している.今後,これらの病態の組織学的,生化学的解析が残されているが,概ね当初の予定通りの進行である. 臨床研究では,足関節周囲の術後患者に対する微弱電流刺激効果について検証した結果,一定の効果が得られている.しかしながら「エビデンスが確立されていない治療」への研究ということで,医療機関での協力が得られにくい部分もあり,整形外科疾患に限定せずに,協力施設を模索中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向性としては,「糖尿病モデル」「ステロイド投与モデル」といった,難治性皮膚損傷モデルラットに対する微弱電流刺激の効果検証を行う予定としている. 糖尿病患者は,潰瘍や壊疽を生じ,切断に至ることがある.このような患者は,断端形成が遷延することが多い.糖尿病から切断に至る患者は,高齢であることが多く,それによる廃用は,患者のADLならびにそれに関わる人々のQOLの低下を来す.微弱電流刺激が,これらの断端形成を早める効果を示せば,医療に対する貢献は大きいと考えられる. 同様に,ステロイドを長期投与している関節リウマチ患者等が,人工関節置換術などを行うと,術創部の治癒が遷延するため,このようなモデルに対する微弱電流刺激の効果検証を行う. また,さらにこれらの治療による作用機序を確認するために,組織学的,生化学的手法を用いた効果検証を進めることを今後の研究水深方策とする.
|