2011 Fiscal Year Annual Research Report
食事摂取基準の補完を目的とする二重標識水法を用いた幼児のエネルギー代謝測定
Project/Area Number |
23680068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
海老根 直之 同志社大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (30404370)
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Keywords | 幼児 / 二重標識水 / ヒューマンカロリメーター |
Research Abstract |
本研究は,日本人の食事摂取基準における推定エネルギー必要量の拡充をねらい,世界的観点でデータが欠損している幼児を主な対象とし,安静時代謝量と日常生活中の身体活動量の2点について実態調査を行う事を目的としている.本年度は,幼児で実施される測定を念頭においた方法論の改善・改良を行ったうえで,実際の調査を開始した.安定同位体を用いる本研究では,安全性に関する正確な情報の提供に慎重な姿勢が求められるため,入手可能な学術資料を精査し,二重標識水(DLW)法の安全性について改めて確認を行った. 間接熱量測定法のうち,ダグラスバッグ法,フード法,ブレスバイブレス法,ヒューマンカロリメーター(HC)法の実験室的予備検討を行い,それぞれの精度的向上を図った.高性能ガス質量分析器を用いるダグラスバッグ法を確立することができた.また,被検者に安静を保持させる際にどのような課題提示をすべきかについても検討し,安静課題とビデオ視聴課題の結果には差がないことも見出した. DLW法に関して対象者の負担軽減を目的とした検討を行い,投与4-5時間後に採尿を行う条件であれば,スポーツドリンクとして同位体投与を行った場合,ならびに投与時に軽食を摂取させた場合のいずれの場合でも,総体水分量の算出において実質的な問題は生じないことが明らかとなった. 幼児を対象とし,HC法とフード法を組み合わせた,安静時代謝,睡眠時代謝,基礎代謝の測定を実施し,これらの比較を行った.HC法で測定された睡眠時代謝量の結果は,入眠時と早朝で安定している反面,基礎代謝量の測定時には開放的に実施できることが仇となり,体動が誘発されることで著しく高いエネルギー消費量が観察される事になった.今後は,フード法またはダグラスバッグ法を主たる方法とするか,基礎代謝量にこだわらずに睡眠時代謝量の測定値を重要視するかのいずれかの方向性で測定を実施する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,汎用されている間接熱量測定法を用いた調査を行うが,幼児を対象とする特殊性があるため,測定方法の改良と運用面での改善が必須である.二重標識水法の手続における負担軽減も含め,方法論に関する検討は当初の期待を上まわって推移している.この一方で,上記検討に時間を要したため,幼児を対象とした調査の例数は必ずしも満足のいくものとは言い難い. 以降,本格実施される調査における安全面の配慮として,方法論の検討は研究初年度においては特に重要であることを考えると,総じて研究は順調に推移していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
幼児を対象として運用できる測定法の開発,または現行法の改善と改良が行えたことで,本格的な調査実施の基盤が整ってきている.測定の対象者と保護者の負担軽減は,測定の協力者を募るためには極めて重要な観点であり,今後も継続して検討していく. 次年度以降は,測定協力者の募集範囲を広げ,質の高い測定を展開する事を前提にしながらも,測定例を伸ばしていくことになる.
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