2012 Fiscal Year Annual Research Report
食事摂取基準の補完を目的とする二重標識水法を用いた幼児のエネルギー代謝測定
Project/Area Number |
23680068
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
海老根 直之 同志社大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (30404370)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 幼児 / 二重標識水法 / 間接熱量測定法 / 系統的レビュー |
Research Abstract |
本研究は,日本人の食事摂取基準における推定エネルギー必要量の拡充を目的としている.世界的にデータ不足にある幼児を対象とした実態調査,調査規模の拡大を見据えた測定法の整備・改善,文献データベースを活用した基準値検討の科学的論拠の取得が活動の柱である.平成24年度分の活動実績として特に顕著であった成果を以下に示す. 幼児の総エネルギー消費量(TEE)の実態把握のため,複数の幼稚園の協力のもと26名を対象に調査を行った.測定には前年度の活動で安全性が改めて確認された精確な測定法である二重標識水(DLW)法と3軸加速度計法を併用した.翌年度も調査を継続し例数を増やすことから,DLW法において系統誤差を排し有意義な結論が導き出せるように,2カ年分の試料は同時分析される. 大阪府立母子保健総合医療センターの協力を得て,特別な栄養指導が必要となる低身長児を対象としDLW法ならびに間接熱量測定法による調査を実施した(男児4名,女児4名の計8名;5.2±0.5歳,96.2±2.5cm,13.4±1.2kg).TEEを基礎代謝量(BMR)で除した身体活動レベル(PAL)は1.45±0.15と,食事摂取基準に示される同年齢児の値と同等で,身体活動については大差がないことが明らかとなった. 間接法によって安静時の代謝量を標的とした測定を行う際のプロトコルと測定条件を整えるため,実験室的基礎検討も行った.ガス濃度分析装置の安定性に寄与する暖機運転と校正ガスのあり方,ならびに安静保持のための課題提示法について重要な知見を得た.また,測定前の温熱負荷ならびに飲水が対象者の代謝量を検出可能なレベルで亢進させてしまう安静時特有の困難さも浮き彫りとなった. 幼児の推定エネルギー必要量の策定に資するデータを求め,データベース(2013年2月時点)を活用して文献を収集,精査したが,食事摂取基準2010年版の厳格な採択基準を満たす新規データは存在しなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,推定エネルギー必要量基準値の拡充を目的とし,実験室的検討,フィールド調査,文献研究の3面からアプローチを行っている. 安定同位体を服用させる二重標識水法を子どもに適応するためには,安全性を最大限に担保して調査を行う事が必要であり,慎重な足運びが求められている.現時点において著しく優れた成果が残せているとは言い難いが,同位体分析の精度を高めるための検討も順調に推移しており,試料取得後の解析活動は促進される見通しである. 一方で,実験室的検討については当初の期待を超える成果が残せている.身体活動量を評価する場合においても,その基線となる安静時代謝が正確に取得できることは極めて有意義である.適切な実験機器がセットアップされたこと以外にも,測定開始前の被検者に対し,どのような配慮を施すべきかが明確となった価値は高い. 系統的レビューの結果,幼児の推定エネルギー必要量を導き出すためのエビデンス不足は,本研究を開始した当初から改善されていないことが明らかとなった.このため,本研究が行っている実態調査の価値は依然として高く,早期にデータを公表することが求められている.
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Strategy for Future Research Activity |
二重標識水法ならびに間接熱量測定法について,方法論的に改善がなされたことに加え,本年度事業においてフィールド調査を円滑に行えたことで良質の経験を得ており,今後の調査はさらに円滑に進むと思われる.翌年度以降は,測定協力者の背景範囲を広げ,本研究の目的に合致させた質の高いデータを取得することに努めていく. また,フィールド調査には人手が必要となることから,調査スタッフの育成・指導にも力を入れていく.
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