2011 Fiscal Year Annual Research Report
エラストマーの構造制御法から発想した米粉100%による全く新しい製パン技術の開発
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23680072
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
西岡 昭博 山形大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (50343075)
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Keywords | エラストマー / レオロジー制御 / グルテンフリー / 製パン技術 / 構造制御 / 米粉 |
Research Abstract |
平成23年度(初年度)は以下の各項目について実験・研究を行った。下記に具体的な成果の概要を記載する。 (1)オイル添加による米澱粉の構造制御と弾性的性質との相関 (2)の検討結果を基に、「オイル添加による米澱粉の構造制御と粘弾性的性質との相関」に関する検討を行った。初年度はオイルを米澱粉生地に添加し、その物性に与える影響を検討した。一般的な市販の植物性オイルを添加した実験では系統的な実験が難しいため、オイルの主成分であるパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸という3種類の脂肪酸を米澱粉生地に添加し、その効果を検討した。示差走査熱量測定、レオロジー測定から添加効果を実験的に明らかにした。その結果、アミロースー脂質複合体の形成は、脂肪酸の形成に大きく影響するが、生地の糊化特性にはほとんど影響しないことがわかった。さらに、脂肪酸の添加と種類は生地のレオロジー特性に影響することも明らかにした。次年度も引き続き、オイル添加による米澱粉の構造制御と粘弾性的性質との関係を検討する。同時に、製パン性への影響も検討していく予定である。 (2)スチレン系ブロック共重合体/パラフィンオイル添加系におけるミクロ相分離構造とレオロジーの相関 オイルを添加することによる澱粉の構造制御を行い、生地に製パン性を付与しようという考えは、申請者の専門分野であるエラストマーにおける考えから発想したものである。従って、研究の開始当初からスチレン系ブロック共重合体/パラフィンオイル添加系におけるミクロ相分離構造転移に関する実験を行った。これらの実験成果はオイル添加による米澱粉の構造制御法を開発する上で、基礎的知見となる。本実験によりスチレン系ブロック共重合体に添加されるパラフィン系オイルの分子量、添加量により異なるミクロ相分離構造へ転移することが実験的に明らかになった。また構造の違いは系のレオロジー特性にも影響を与え、オイルの添加はレオロジー特性の有効な制御法であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、当初の申請書の記載の通り順調に研究を遂行した。具体的には、オイルの主成分であるパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸を展開し、構造形成やレオロジー特性への影響が計画通り明らかにできたため、区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は、申請者の専門である高分子材料分野で行われるオイル添加による熱可塑性エラストマー(熱で溶融するゴムの総称)の構造制御技術を食品加工に応用展開することで、(1)オイル添加による米粉生地の粘弾性制御技術の確立とメカニズム解明、(2)この技術を応用した製パン技術の確立を行うことにある。23年度に引き続きオイル添加による生地の粘弾性制御と製パン性の付与に関して強力に研究を推進する。そのために食品関連企業や公設の農業総合研究センターなどとの連携も視野に入れ、学術的、工業的な意義を見出したい。
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Research Products
(5 results)