2012 Fiscal Year Annual Research Report
食品成分の生体内有効性を制御する概日リズム因子のデータベース構築とその応用
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23680074
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
榊原 啓之 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20403701)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 概日リズム / 食品機能性成分 / 生体内有効性 / 生物時計 / げっ歯類 |
Research Abstract |
ヒトや実験動物をはじめとする生物の体内では、多くの生体機能、例えば、睡眠/覚醒、神経活動、ホルモン 分泌、体温、酵素活性に約24時間周期のリズム(概日リズム)が認められている。ところが、実験動物を用いた 多くの食品成分の有効性評価は、生体の概日リズムを考慮に入れて実施されてこなかった。本研究は、体内で刻まれている様々な概日リズムによって、摂取した食品成分の生体内有効性がどのように制御されているのかを明らかにし、その制御機構のデータベースを構築するとともに、概日リズムを調節できる食品成分を探索することを目的として推進しており、平成24年度の研究では次の結果を得た。 1. 消化管を対象として、機能性成分の吸収代謝機構を制御している因子を中心にして日内発現リズムを追跡したところ、これまで未報告の因子の遺伝子発現にも明確な日内発現リズムが存在することを見出した。 2. 食品機能性成分としてアントシアニンや機能性ペプチドを用いて試験を実施したところ、それら成分の体内吸収量が摂取時刻により変化する可能性を示唆する知見を得た。またその変化を惹起する要因は、睡眠期と活動期間における消化管内通過速度の違いや吸収をつかさどっているトランスポーターの発現強度の違いにあると考察した。 3. 機能性食品成分が体内で刻まれているリズムに及ぼす影響を細胞試験により評価していくために、ヒトの肝がん培養細胞を用いた試験系を立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施した研究により、消化管において吸収代謝を制御しているシステムの中に新たにリズムを刻んでいる因子を見出した。また、機能性食品成分の吸収量が摂取時刻によって異なる可能性があることを動物個体レベルで見出した。さらに、食品因子が体内で刻まれているリズムに及ぼす影響を評価する為の細胞を用いた試験系を導入できた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた結果を基盤として、今後は次の3つの課題を主軸に推進する。 1. 食品機能成分の生体内有効性に影響を及ぼす生体因子の日内リズムのデータベース構築の継続:マウスやラット等のげっ歯類から経時的に血液や肝臓、消化管等のサンプルを採取し、そこで刻まれている様々な因子の 日内リズムを定量的RT-PCR、Western blotting、HPLC等により測定する。 2. 摂取する時刻が栄養成分や食品機能性成分の生体内有効性に及ぼす影響:栄養成分としてはたんぱく質(アミノ酸)や糖質(グルコース)を、食品機能成分としてはベリー系果実に含まれるフラボノイド類を被験物質として用い、それら成分の生体内有効性(吸収量や抗酸化活性等)に及ぼす摂取時刻の影響を追跡する。 3. 培養細胞を用いた時間機能性食品学の評価:平成24年度の研究で導入した細胞レベルでリズムを評価する系を用い、in vivo試験により、機能性成分が体内リズムに及ぼす影響の評価を開始する。
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