2011 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化が黄砂発生・輸送の将来変化に及ぼす影響の予測とそのメカニズムの分析
Project/Area Number |
23680084
|
Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
常松 展充 独立行政法人防災科学技術研究所, 社会防災システム研究領域 災害リスク研究ユニット, 特別研究員 (80524462)
|
Keywords | 黄砂 / 地球温暖化 / モデリング / 擬似温暖化法 / 地域気候モデル / 将来変化 / シミュレーション / ダウンスケーリング |
Research Abstract |
地球温暖化に伴う気候変化の情報を、黄砂の発生と輸送の将来変化予測シミュレーションに反映させるため、全球気候モデル「MIROC」によるSRES-A1Bシナリオ実験の結果から得られた気候予測データ及び20世紀再現実験結果から得られた気候再現データの解析を行った。具体的には、気温・比湿・ジオポテンシャル高度・風のuv成分・地表面温度について、将来(2080-2100年)と近年(1980-2000年)の差分(以下「温暖化差分」と呼ぶ)を、全球気候モデルの各グリッド毎に算出し、6時間毎の温暖化差分データを作成した。そして、作成した温暖化差分を、黄砂の発生と輸送のシミュレーション(水平解像度:20km)の初期・境界条件となる数値データに加算した。高解像度シミュレーションの初期・境界条件となる数値データに温暖化差分を加算する方法は「擬似温暖化法」と呼ばれ、それが、全球気候モデルのもつバイアスへの依存を低減させたダウンスケーリングを可能にする手法であることから、気候変化予測に関する多くの先行研究で用いられているものの、黄砂等の大気汚染物質動態の将来変化シミュレーションに応用した先行研究はない。上記のデータ処理により、全球気候モデルのバイアスを低減させた上で黄砂発生輸送の将来変化をシミュレートすることを可能にした。 また、地域大気モデリングシステム「WRF」をベースにして独自に開発した黄砂発生輸送モデルをさらに改良し、そのモデルに気候の将来変化情報を与えたシミュレーションをケーススタディとして行った。その結果は、エルゼビア社が発行する著名な大気環境専門誌に論文掲載された。地球温暖化の進行に伴う気候の将来変化が黄砂の発生と輸送に及ぼす影響を予測した研究は現在のところ希少であり、本研究結果は、黄砂等のミネラルダスト、あるいは他の大気汚染物質の動態の将来変化に関する今後の研究に資するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、防災科学技術研究所のスーパーコンピュータも、停電等のため一時停止し、電力等復旧後も、大規模な節電によって、数カ月に渡る縮退運用を余儀なくされた。これにより、黄砂発生輸送モデルのスーパーコンピュータへのインストールと、その後の数値シミュレーション(予備実験を含む)の実行に大きな支障が生じた。当初の計画では、平成25年6月までに長期シミュレーションとその結果の分析を完了する計画であったが、主に上記の理由によって、数値シミュレーションについては、3ヶ月程度の遅れが生じている状況である。 その一方で、地球温暖化に伴う気候変化の情報を黄砂発生輸送の将来変化予測シミュレーションに反映させるためのデータ処理を順調に行い、また、シミュレーション実行をできるだけ自動化するためのShellスクリプトやPerlスクリプトの作成を行った。こうして、本格的な長期シミュレーションの実施に向けた準備を整えた。さらに、長期シミュレーションの実施にあたって必要とされる、黄砂発生輸送モデルの改良とそのセッティングの調整を行った。これらの工程を経て、現在、黄砂発生輸送の将来変化シミュレーションを本格的に実施している。また、数値シミュレーションの進捗に遅れが生じている分、平成25年6月以降に行う予定であった、20世紀における気候変化と黄砂の発生頻度・空間分布との関係を統計的に解析する作業を、前倒しして行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
黄砂発生輸送の将来変化シミュレーションを引き続き行い、当初計画した全期間(1999年・2000年・2001年・2002年の冬季・春季)のシミュレーションが終わり次第、その結果を解析することで、地球温暖化に伴う気候の変化が、将来における黄砂の発生と輸送に及ぼす影響を、空間的かつ定量的に予測するとともに、そのメカニズムについての分析を行う。水平空間解像度20kmという、アジアスケールとしては高解像度の数値シミュレーションを実施することで、地球温暖化による黄砂の発生及び輸送への影響を空間詳細に分析・予測する。また、20世紀における気候データ及び黄砂現象に関する観測データの統計解析を引き続き行うことで、現在までの地球温暖化の進行に伴い、黄砂の発生と輸送にどのような空間的・量的な変化がもたらされてきたのか明らかにする。さらに、この統計解析結果との比較を通じて、黄砂発生輸送の将来変化予測シミュレーション結果の妥当性を検証する。 研究成果は、国内外の学会・研究会・シンポジウム・ワークショップ等において発表するとともに、論文として国内外のジャーナルに投稿する。
|
-
-
[Presentation] 2台のドップラーライダーとヘリコプターにより観測された孤立波2012
Author(s)
岩井宏徳, 小田僚子, 石井昌憲, 水谷耕平, 板部敏和, 村山泰啓, 常松展充, 山田泉, 又吉直樹, 松島大, 余偉明, 山崎剛, 岩崎俊樹
Organizer
日本気象学会2012年度秋季大会
Place of Presentation
札幌、日本
Year and Date
20121003-20121005
-
[Presentation] Characteristics of the dust over the Taklimakan Desert in Spring- Ground-based lidar, satellite remote sensing, and WRF-chem simulation2012
Author(s)
Kai, K., Y. Ueno, N. Sugimura, N. Tsunematsu, H. Zhou
Organizer
CALIPSO, CloudSat, EarthCARE Joint Workshop
Place of Presentation
Paris, France
Year and Date
20120618-20120622
-
-
-