2011 Fiscal Year Annual Research Report
治療抵抗性を示す難治性癌に対する抗癌標的化ハイブリッドペプチド療法の研究
Project/Area Number |
23680089
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 浩司 京都大学, 医学研究科, 教授 (70422318)
|
Keywords | 分子標的治療 / ペプチド創薬 / ハイブリッドペプチド / 難治性癌 / 治療抵抗性 |
Research Abstract |
現在、医療現場で用いられている「抗体医薬」などの癌の増殖を抑制する分子標的抗癌剤は、患者の癌に遺伝子変異があると投与している薬剤が効かず副作用がでるという問題を抱えている。これらの問題点を克服するために我々は、35個程度のアミノ酸の連なりで、癌細胞を特異的に認識して、その膜をこわしていく「ハイブリッドペプチド」を新たに設計した。本研究では、各癌の性質、特徴に合わせて設計した各種ハイブリッドペプチドが、これまでの分子標的薬が抱えている問題を克服できることや、さらに優位性を明らかにして、難治性の癌に対してこれまでの分子標的薬に代わる新たな治療法を示すことを目的としている。平成23年度は、主に下記の研究内容を行った。 (1)難治性癌に対する各種ハイブリッドペプチド候補配列の検討 各種難治性癌における高発現受容体を標的分子候補とした。膵臓癌ではsemaphorin 3A (sema3A)の受容体であるNeuropilin-1、脳腫瘍、肺癌ではTransferrin受容体(TfR)、胆道系癌ではHer2を標的として候補配列の設計を行った。設計された配列に関しては、これら標的との結合度合いの相性などを調べた後、癌細胞膜を特異的に破壊させるペプチド配列lyticと組み合わせた。各種設計されたハイブリッドペプチド、Sema3A-lytic、TfR-lytic、Her2-lyticのこれら標的分子が多く発現している癌細胞に対しての殺傷効果を確認したところ、いずれのペプチドも効率的に癌細胞を殺すことが判明した。 (2)候補ペプチドの抗腫瘍効果試験 TfR-lytic、Her2-lyticの二つのハイブリッドペプチドは、ヒトの癌細胞を用いた動物モデルにおいても、効果的に腫瘍が大きくなるのを抑える効果が示され、同時に肺、肝臓、腎臓に顕著な毒性が出ないことも確認された。 (3)細胞内メカニズム解析 Lyticペプチドが癌細胞膜を特異的に見分ける機構を調べた結果、単に細胞膜へ結合して外から崩壊させるだけでなく、一部は取り込まれて殺細胞効果を示す可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画の内容に関して、予定としていた各種ハイブリッドペプチドの設計、評価、さらには、抗腫瘍効果も確認できたこと、また、癌細胞の殺傷のメカニズムに関しても、取り込まれて殺細胞効果を示す可能性を示唆するデータもえられ、ここまでおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにハイブリッドペプチドが癌細胞を殺傷するメカニズム解明、ならびに、生体内におけるこれらペプチドの動態、安定性を確認すること、また、必要に応じていくつかのDDS(薬剤配送システム)と組み合わせて、さらに効果を高め、毒性を軽減できるかどうかを確認していく予定である。
|