2012 Fiscal Year Annual Research Report
治療抵抗性を示す難治性癌に対する抗癌標的化ハイブリッドペプチド療法の研究
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23680089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 浩司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70422318)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子標的治療 / ペプチド創薬 / ハイブリッドペプチド / 難治性癌 / 治療抵抗性 |
Research Abstract |
現行の分子標的薬、特にチロシンキナーゼ阻害分子標的薬(TKI)に対して治療抵抗性・獲得耐性を示す難治性癌への新規治療法を見出すべく、癌細胞膜を崩壊させて癌細胞を殺傷し、化学合成できる革新的な分子標的抗癌剤「ハイブリッドペプチド」を設計した。平成24年度では、各種癌細胞高発現受容体のEGFRだけでなく、乳癌等高発現のErbB2(Her2)、脳腫瘍等高発現のTransferrin受容体(TfR)などへの分子標的化ハイブリッドペプチドについて、そのTKI等に対する優位性、生体内でのプロファイル解析等を実施した。 (1) Her2-lyticによるTKI耐性克服の検討 Her2-lyticは各種Her2高発現ヒト乳癌細胞株だけでなく、Her2-TKIであるlapatinibとHer2抗体薬Trastuzumabの両方に耐性を示すMDA-MB-453等においても、強いin vitro殺細胞効果及び担癌マウスでの静脈内投与による抗腫瘍効果を示した。 (2)生体内プロファイル等解析 抗腫瘍効果を示す用法用量においてTfR-lyticの免疫原性及び各種毒性を評価したところ、T細胞応答、中和抗体産生等の免疫反応はみられず、白血球減少、若干の溶血作用以外の特段の毒性所見はみられなかった。蛍光標識EGFR-lyticペプチドをマウスに静脈内投与して、経時的な血中動態を蛍光イメージング法で調べたところ比較的すみやかに血中から消失したため、血中分解抑制と徐放化の目的でゼラチンゲルとの複合体を作成してその体内動態安定性を向上させることが確認できた。 (3) 癌細胞膜崩壊性Lyticペプチドの細胞内メカニズム解析 Lyticペプチドは癌細胞においてエンドサイトーシス依存的及び非依存的の両方の作用で細胞内へ取り込まれている可能性が示唆され、その作用に関与する分子をいくつか同定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の研究計画の内容に関して、予定していたハイブリッドペプチドの生体内プロファイル解析の一部とともに免疫動態解析を実施し、Her2-lyticについては現行の分子標的薬等で耐性を示す癌に対するin vitroにおける殺細胞効果、in vivo抗腫瘍効果も確認することができた。また、爆薬部分配列の癌細胞膜崩壊性lyticペプチドの殺細胞効果のメカニズム解析においても新たな結果を得ることができており、ここまでおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ハイブリッドペプチドのDDS(Drug Delivery System)との組み合わせによる、in vivoにおける抗腫瘍効果の増強ならびに体内動態向上の可能性をさらに検討を加えていく。また脳腫瘍に特異的に高発現しているInterleukin13受容体α2サブユニットに特異性を示すハイブリッドペプチドの作用検討、さらには、爆薬部分配列lyticぺプチドの癌細胞内取り込み及び内部動態、関与分子の特定等のメカニズム解析を進め、更なるハイブリッドペプチド療法の可能性を示す予定である。
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