2011 Fiscal Year Annual Research Report
マルチトレーサーによる北極海の酸性化に関する定量的研究
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23681002
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
川合 美千代 東京海洋大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (50601382)
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Keywords | 北極海 / 海洋酸性化 / トレーサー |
Research Abstract |
北極海では近年、大規模な海氷の融解や水温上昇、表層の淡水化などが報告されている。本研究では、これらの変化が北極海における海洋酸性化をどれだけ促進あるいは抑制し、北極海および周辺海域の物質循環や生態系にどのような影響を与えるのかを、いくつかの化学トレーサー(酸素同位体比、栄養塩、溶存酸素、アルカリ度、SF6)を組み合わせることで定量的に明らかにすることを目的としている。平成23年度には時系列採水器を2機購入し、来年度の設置に向けて関係者との調整を行い、西部カナダ海盆の南北2か所に設置することを決定した。また、SF6測定装置組み立てのための設計を行い、必要な物品の購入を行った。9月にはカナダ砕氷船による北極海航海に参加し、カナダの研究者と共にアルカリ度、溶存無機炭素濃度、pH、酸素同位体比の観測を行った。アルカリ度・全炭酸から算出したpHが、実測のpHと一致したことから、過去のアルカリ度・全炭酸データを用いて北極海のpHを復元することに問題がないことが確認できた。また、アルカリ度・全炭酸データから海水の炭酸カルシウム飽和度を調べた結果、未飽和な表層水が2008年ほどではないが広域に分布していることが分かった。さらに、これまでに得られたデータを用いて、水温・塩分・溶存酸素・栄養塩濃度から炭酸カルシウム飽和度の分布を復元することを試みた。その結果、水温・塩分・溶存酸素の3つがあれば炭酸カルシウム飽和度をおおよそ予測できることが分かった。これらは、CTDや係留系のセンサーによる詳細あるいは通年の観測が可能な成分であるため、時系列採水器を設置していない場所でも、これらのセンサーデータから炭酸カルシウム飽和度の季節変動などを推測できると考えられる。例えば大陸棚上への中層の未飽和水の湧昇の程度・期間などを推測することができ、底生生物への影響などを考える際の重要な情報が得られると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SF6測定装置の組み立てが若干遅れているが、そのほかは予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
若干遅れているSF6測定装置の組み立てを急いで進め、早急に予備実験を開始する。その他は予定通りに進めていく。
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Research Products
(3 results)