2011 Fiscal Year Annual Research Report
微生物によるヒ素の環境動態変化に及ぼす抗生物質の影響の解明
Project/Area Number |
23681005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
山村 茂樹 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (90414391)
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Keywords | ヒ素 / 環境動態 / 抗生物質 / 耐性細菌 / ヒ酸塩 / 亜ヒ酸塩 |
Research Abstract |
抗生物質の環境中への流入には、ヒ素による水環境汚染を助長する新たなリスクが潜在するが、これまでにその可能性に着目した研究は報告されていない。本研究では、微生物によるヒ素の可溶化/不溶化に及ぼす抗生物質の影響を解明し、そのリスクを詳細に評価することを目的としている。 国立環境研究所構内の池、及び霞ヶ浦から採取した底泥サンプルを微生物植種源として、無機ヒ素の酸化・還元に及ぼす各種抗生物質の影響を個別の培養試験により調べた。好気条件下で行った実験では、抗生物質の有無に関わらず全ての実験系でヒ酸塩の還元が生じたものの、クロラムフェニコール等の一部の抗生物質によって亜ヒ酸塩の酸化が阻害を受けた。亜ヒ酸塩酸化が阻害を受けた系では、16SrRNA遺伝子の解析から、中温性亜ヒ酸塩酸化細菌の属するプロテオバクテリアの割合が大幅に減少していることが確認され、さらに亜ヒ酸塩酸化酵素をコードするaoxB遺伝子も検出されなかった。これらの結果から、好気性のヒ酸塩還元細菌は各種の抗生物質に対して幅広い耐性を持つが、亜ヒ酸塩酸化細菌は一部の抗生物質への感受性が高いことが明らかとなった。これまでの研究から、好気環境ではヒ酸塩還元と亜ヒ酸塩酸化が同時に起きることで、結果的に吸着性の高いヒ酸塩が優先している可能性が示されている。本研究の結果から、ある種の抗生物質が、環境微生物によるヒ素の酸化・還元のバランスを崩し、ヒ素を水相へと移行し易くする可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった、ヒ酸塩還元活性の促進に高い効果を持つ抗生物質のスクリーニングを概ね達成し、さらに亜ヒ酸塩酸化細菌が一部の抗生物質に影響を受けやすいことを明らかとした。また、実験・解析条件の最適化により、次年度以降の研究を効率的に進める礎を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は順調に進展しているため、今後も計画通りの方策で推進する。
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