2012 Fiscal Year Annual Research Report
微生物によるヒ素の環境動態変化に及ぼす抗生物質の影響の解明
Project/Area Number |
23681005
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
山村 茂樹 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (90414391)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒ素 / 環境動態 / 抗生物質 / 耐性細菌 / ヒ酸塩 / 亜ヒ酸塩 |
Research Abstract |
抗生物質の環境中への流入には、ヒ素による水環境汚染を助長する新たなリスクが潜在するが、これまでにその可能性に着目した研究は報告されていない。本研究では、微生物によるヒ素の可溶化/不溶化に及ぼす抗生物質の影響を解明し、そのリスクを詳細に評価することを目的としている。 茨城県内の河川・湖沼から採取した数種類の底泥サンプルを植種源として用い、無機ヒ素の酸化・還元に及ぼす各種抗生物質の影響を培養試験により調べた。その結果、抗生物質耐性を持つ好気性のヒ酸塩還元細菌(ヒ素耐性細菌)は、環境中に広く分布している可能性が示された。また、16S rRNA遺伝子解析の結果から、一部の抗生物質添加系では、Chryseobacterium属の優先化が見られた。Chryseobacterium属細菌は多剤耐性を有することが知られており、ヒ素耐性遺伝子を有する種も報告されている。これらの結果から、抗生物質が環境中に流入すると、共耐性作用によって、間接的にヒ素耐性細菌が優先化する可能性が示唆された。一方、亜ヒ酸塩酸化細菌の抗生物質に対する感受性は生息域によって異なり、より好気的な河川底泥には、旺盛な亜ヒ酸塩酸化能を持つ細菌群が生息していることが示された。また、16S rRNA遺伝子及び亜ヒ酸塩酸化遺伝子解析の結果から、一般的な環境中の亜ヒ酸塩酸化細菌は、ほとんどがプロテオバクテリア門に属することが明らかとなり、ある種の抗生物質によってその活動が阻害されると酸化・還元のバランスが崩れる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった、環境中におけるヒ酸塩還元・亜ヒ酸塩酸化活性に及ぼす抗生物質の影響の評価が順調に進展し、影響を受けやすい細菌群がある程度明らかとなった。また、本実験は次年度も実施予定であるため、実験・解析フローを確立したことにより、以降の研究を効率的に進める礎を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は順調に進展しているため、今後も計画通りの方策で推進する。所内外の関連研究者と積極的に意見交換し、ヒ素及び抗生物質の微生物学に関する最新の知見を取り入れ、新たな研究展開にも柔軟に対応できるよう推進する。
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