2012 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌撹乱化学物質のヒトにおけるリスク評価へ向けた脳発達影響評価系の確立と応用
Project/Area Number |
23681010
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
根岸 隆之 青山学院大学, 理工学部, 助教 (80453489)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | サル / ラット / 甲状腺ホルモン / 神経発達 / 化学物質 |
Research Abstract |
本研究は「内分泌撹乱化学物質のヒトにおけるリスク評価へ向けた脳発達影響評価系の確立と応用」を課題として3年計画で実験動物(カニクイザル・ラット)を用いた個体レベル(in vivo)および細胞レベル(in vitro)での実験系の構築を目指す。3年計画の2年目である平成24年度は昨年につづき、カニクイザルの脳発達についての分子生物学的評価と培養アストロサイトを用いた化学物質の影響評価に注力した。 個体レベルの実験については、前年度に引き続き、胎齢110、140日、生後30、60、90日、および4歳の脳各部位(前頭葉皮質、帯状皮質、尾状核、海馬、および小脳)でのドーパミン作動性神経伝達に重要な役割を果たすタンパク発現量を評価した。また、新生仔期に甲状腺ホルモンを欠乏させたカニクイザルについてもこれらの因子の発現量を評価したが影響は見られなかった。また、セロトニン作動性神経伝達に関するタンパク質(セロトニン受容体、輸送体、合成酵素、および代謝酵素等)の発現を評価するための条件検討を行った。 細胞レベルの実験については脳の機能に神経細胞と同等に重要であるアストロサイトについてラット・カニクイザル・ヒト由来の培養系を確立し、被験物質曝露が遺伝子発現やタンパク発現に与える影響を解析し得る状態にした。また、遺伝子発現やタンパク発現にとどまらず細胞内情報伝達に与える影響を評価するために細胞内におけるキナーゼカスケードに注目した評価系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は実験動物を用いた結果をヒトにおけるリスク評価に役立てるために個体レベル・細胞レベルの試験で蓋然性を高め、カニクイザルとラットを材料とすることで霊長類とげっ歯類の間にある種差の有無・程度の評価を一連のバッテリーとして組むことを目指している。 2年目を終えて本研究の一つの目標であるカニクイザルの化学物質影響評価への利用に必要な背景データの収集は概ね完了した。また、甲状腺ホルモン欠乏に対するラットとカニクイザルの種差についてもだいぶ明らかになった。加えて細胞レベルの評価系も概ね確立できた。 以上の理由より概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の2年が終了した段階で概ね予定通りに進行しているので、今後は本研究の完成を目指す。カニクイザルの脳発達の分子生物学的評価については発現量については概ね完了したのでここからは免疫組織化学を用いて注目するタンパク質の組織局在等に言及できる実験を展開したい。細胞レベルの実験系も概ね確立できたので今後は実際の化学物質を曝露しその影響を評価したい。また、次年度は最終年度なので本研究の成果の早急な論文発表を目指す。
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