2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子ネットワーク構築のための固体における単一発光中心の研究
Project/Area Number |
23681017
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水落 憲和 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (00323311)
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Keywords | 量子暗号通信 / 量子コンピューティング / スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究では量子ネットワークの構築のための室温動作する量子情報固体素子実現に向けた基盤研究を主にダイヤモンド中の窒素-空孔複合体(NV)中心を用いて行っている。スケーラビリティという観点から数量子ビットを持った多くの量子レジスタを量子もつれ状態にして量子ネットワークを形成し、量子計算・量子暗号通信を実現しようという理論提案がある。NV中心はこのアーキテクチャで要求している数量子ビットの量子レジスタとして期待できる。 最近、我々は単一光子の電流注入による発生に成功した。成果はNature Photonics誌に掲載された。平成23年度は、発光機構の解明研究と主に更なる高効率化に向けた研究を行っていた。ドーパント(リン)の濃度を変えることにより、これまでより数倍の定電圧での動作が可能となった。これは更なる効率化や目的としていた負電荷のNV中心の持つスピンを電気的に制御することにつながる重要なステップであると考えている。 また、NV中心の優れたスピン特性を用い、2つの単一核スピンを用いた量子もつれ検出の基盤的な動作検証を行うことができた。成果を学会にて発表した。 近年、我々は固体材料の中でも、室温動作、広範囲な発光波長、長いスピンコヒーレンス時間等の観点から、ダイヤモンド以外のワイドギャップ半導体にも注目して研究を行っていた。特にSiCに注目し、単結晶及びナノ粒子での研究を行い、SiC単結晶及びナノ粒子で、室温で光検出磁気共鳴を観測することができた。磁気共鳴スペクトルの解析から発光中心が、空孔欠陥に由来することを突き止めることができた。これらは今後のスピン操作の実験に対し、測定時間等の観点から重要な知見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は単一光子の電流注入による発生に関し、計画通りに更なる高効率化に向けた研究を行い、より定電圧での動作を実現できた。また、計画通りにNV中心の優れたスピン特性を用い、2つの単一核スピンを用いた量子もつれ検出の基盤的な動作検証を行うことができた。ダイヤモンド以外の材料についてもSiCにおいて新たな発光中心の発見や帰属を行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度はおおむね順調に計画を進めることができており、平成24年度も計画通りに進めたいと考えている。SiCにおい平成23年度に可視光において有望と考えられる系の発見を行えたので、当初計画では赤外領域の光検出システムの導入を検討していたが、これについては、平成24年度は見合わせたいと考えている。
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Research Products
(18 results)