2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23681022
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 将 京都大学, 工学研究科, 助教 (20432867)
|
Keywords | 自己組織化 / ナノバイオ / 化学反応 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「リアルなバイオな環境にある刺激」あるいは「バイオ環境で使えるマイルドな刺激」に応答するアダプティブな完全人工自己組織化ナノ材料の開発である。得られたナノ材料は、薬物放出マトリックスや細胞培養機材等のバイオ医療材料としての応用が期待できる。 平成24年度は、開裂反応により自己組織性を失う自己組織性分子を、半合理的分子構造のスクリーニングから見出した。具体的には、今回新たに開発した自己組織性分子は、ナノファイバーネットワークからなる超分子ヒドロゲルを形成し、過酸化水素に応答して選択的に化学反応し、崩壊することを明らかにした。過酸化水素は炎症部位などで濃度上昇することが知られているバイオマーカーである。さらに、開発に成功した過酸化水素応答性超分子ヒドロゲルに酵素(オキシダーゼ)をハイブリッドさせたところ、グルコース、コリン、尿酸、サルコシンといった様々なバイオマーカーに応答して崩壊するヒドロゲル材料となることを明らかにした。このような多様なバイオマーカー生体分子に応答する自己組織化ナノ材料の開発はこれまでに例がなく、薬物放出マトリックスとして非常に有用であると期待される。実際に、インスリンを超分子ヒドロゲル/酵素ハイブリッド材料中に担持させたところ、グルコースの濃度に応じたインスリン放出が観測された。さらに、その応答グルコース濃度は糖尿病患者の血糖値に対応することを明らかにした。したがって、本研究によって新たに創製した自己組織化ナノ構造体を基盤とした超分子ヒドロゲル/酵素ハイブリッドは、病気の状態や進行度を示すバイオマーカーの存在を感知し、薬物を放出するインテリジェントなドラック・デリバリー・システムに繋がるバイオ医療材料として有用であると期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに開裂反応によって自己組織性を失う分子性材料の開発に成功した。得られたナノファイバーネットワーク材料(ヒドロゲル)は従来の分子設計では困難な化学種に対する刺激応答性を付与することを可能にした。以上の成果は、本研究課題で取り組んでいる「化学反応部位を自己組織性分子に組み込むという新しい設計指針」が新規かつ有効であるということを明示している。
|
Strategy for Future Research Activity |
自己組織性分子の設計に利用する化学反応を拡張する。それによって既存のナノ材料とは一線を画する刺激応答性を示す自己組織化ナノ材料の開発とそのバイオ応用(ナノバイオ工学)を着実に前進させ、高バイオ機能性ナノ材料の開発に挑戦する。
|