2012 Fiscal Year Annual Research Report
超高精度3次元分子追跡法を用いた凝縮系ナノ空間反応ダイナミクスの単一分子解析
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23681023
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊都 将司 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10372632)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 単一分子検出 / 単一分子蛍光イメージング |
Research Abstract |
H24年度は、初年度に構築した三次元単一分子イメージング装置を用い、ガラス転移温度が室温より低い高分子薄膜中のゲスト蛍光分子の3次元的な並進拡散挙動を一分子ごとに詳細に追跡することに成功した。一連の研究により、1)ゲスト分子の親疎水性がホスト材料中のゲストの並進運動に強く影響すること、2)ゲスト分子と固体基板表面との相互作用もゲストの並進運動に強く影響すること、3)ホスト高分子の膜厚と異常拡散を示すゲスト分子数に相関があること等が明らかとなった。一つの実験条件に対して100個以上のゲスト分子を追跡し、解析することで、上記現象を定量的に評価した。 また、上記研究に平行し、三次元2色同時検出系の構築を行った。ゲストの発光帯のエネルギー(波長)の差異が比較的大きい場合、相似結像系を用いた場合、色収差により結像位置が僅かに異なるため、2種のゲスト分子に対し同時に焦点を一致させることができなかった。そこで一方の結像光路長が可変なシステムに改造し、この問題を解決した。発色帯の異なる2種の蛍光分子(ペリレン及びテリレン誘導体)を内包するPMMA薄膜を参照試料とし、構築したシステムの校正を行い、性能を評価した。これにより三次元多色イメージングを可能とした。 さらに、蛍光性と非蛍光性の両異性体間を光でスイッチング可能な新規ジアリールエテン誘導体を用いた単一分子追跡に対し、最適な実験条件を決定した。これにより、任意の位置で光によりゲスト分子の蛍光をON/OFF可能な実験系の構築が可能となり、種々の超解像イメージングへの応用の道を拓いた。 オリジナルアイデアに基づく超解像3次元蛍光イメージング実現のための測定装置の製作を行い、性能評価を行った。しかしながら、当初設計通りの性能が発揮されておらず、現在その原因究明、対応・改良策を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度交付申請書記載の研究実施計画に対して、おおよそ計画通り研究を遂行することができた。従来法の3次元蛍光イメージングの多色検出系への展開とそれによる三次元単分子イメージングを達成し、またゲスト分子と材料、基板との相互作用に依存した拡散挙動を統計的に解析可能なデータの蓄積に成功した。ただ、2光束干渉型単一分子イメージング装置の構築に関しては、装置の構築は行ったが期待通りの性能が得られておらず進行が僅かに遅れている。しかし当初計画にはなかった、蛍光スイッチング分子を用いた新たな研究テーマが立ち上がった。これらを総合的に判断し、達成度②とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上でも述べたオリジナルアイデア・方法に基づく3次元単一分子超解像蛍光イメージング装置が設計通りの性能を発揮できるように、原因究明、改善策の考案、性能向上作業に精力的に取り組む。必要に応じ、さらなる機構部品の設計、製作を行うと共に、光照射条件の修正、改良なども行う。それらの対応により、従来法を上回る3次元解像度(ローカリゼーション精度)の実現を目指す。 ゲスト分子とホスト材料、ゲスト分子と基板との相互作用に依存したゲストの拡散挙動に関して、より多種の条件下で多数個のゲスト分子に対してその3次元並進拡散挙動のデータを取得する。具体的には、ゲストの置換基交換、化学修飾による基板表面の物性変化等がどのように影響するかを実験的に確かめる。得られた統計的データを詳細に解析し、ゲスト分子の動きからどのようなホスト材料の局所物性が取得可能かを多面的に検討する。 多色イメージングにより、色素修飾したホスト高分子の動きと低分子量のゲスト分子の拡散挙動を同時に取得し、ホストの構造変化、並進運動とゲストの拡散挙動との相関に関する知見を取得する。 UV光と可視光で、蛍光性と非蛍光性の両異性体間を相互に繰り返しスイッチング可能なフォトクロミック蛍光分子を用い、従来法の欠点を克服した新たな単一分子追跡法、超解像イメージング法の開発に挑戦する。
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Research Products
(21 results)