2011 Fiscal Year Annual Research Report
積層機能と光電変換機能を併せ持つ分子集積体の創製と特性評価
Project/Area Number |
23681025
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
羽會部 卓 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70418698)
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Keywords | 光エネルギー変換 / 分子集合体 |
Research Abstract |
コロネンに代表される平面型多環芳香族炭化水素はπ電子共役に起因する特徴的な光・電子物性と積層型集合体特性を有するため、電子デバイス等への応用展開が期待できる。しかしながら、電子アクセプター材料の知見は電子ドナー材料に比べて限られている。我々は電子アクセプター材料としてコロネン骨格に電子求引性置換基であるイミド基を導入したコロネンイミド誘導体に注目している。本研究では、基本骨格としてコロネンおよびコロネンからベンゼン環が一つ欠損したベンゾペリレンに着目し、イミド基の配置部位と数およびベンゼン環の数、さらに複素環内の炭素数の変化に伴う物性の違いを考慮して一連の誘導体合成を行った。合成は既報に基づきペリレンまたはペリレンカルボン酸二無水物を出発物質として利用し種々のマレイン酸類とのDiels-Alder反応およびアルキルアミンによるイミド化により合成した。次に合成したコロネンイミド誘導体の電気化学特性を評価するためにサイクリックボルタンメトリー測定を行った。それぞれの第一還元電位を比較したところ、コロネン骨格に導入した置換基の電子求引性の強度に応じて順に第一還元電位は正の方向にシフトし、コロネンテトライミドでは約-0.6 V vs. SCEとなった。無置換コロネンの第一還元電位と比較して約1.4 Vもの正へのシフトに成功し、電子アクセプター性を大幅に向上させることに成功した。その他、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの関連カーボン材料についても同様の電気化学および分光特性評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、合成作業を開始するにあたり様々な技術的問題が生じたが、丹念に条件検討等を行った結果その多くは解決することができ、結果として一連の化合物群を合成することに成功した。また、エネルギー変換材料として重要な還元電位も系統的に制御することが分かり、翌年の研究展開を行う上で重要な基礎的知見が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は確立した合成技術と新規反応を加えて、有機色素が共有結合および非共有結合で連結した分子集合体を構築してその光および電子物性の詳細を明らかにしていく予定である。
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